シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ25)

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Episode4 -3 ページ25

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十時前、腕時計を見て櫻井さんが声を上げた。

「あ、そろそろ帰らないとな」

私もつられるように自分の腕時計を見る。

「ええ翔ちゃんもう帰っちゃうの？」

「門限あるかね、こいつが」

翔さんが私を手で示す。

相葉さんは「あぁそっか」と納得したようにうなずいた。

「ニノは？まだ飲む？」

「いや、Aさんが帰るなら俺も帰るよ。俺はAさんと飲みに来たから」

「おいもうちょい俺を大切にしろ」

「男大切にしてもなぁ、翔ちゃんだって女の子ばっか大切にしてんじゃん」

「いやぁ翔ちゃんは女の子もそこまで大切にしてないような」

「なんだって相葉ちゃん」

「いいや別に」

たぶん三人にとっては恒例のやり取りなのだろう。

櫻井さんが女性に紳士的なのは私や松本くんでも知っているくらいだから友人である二人が知らないわけがない。

笑い声が響くと櫻井さんが先に席を立つ。

鞄を持ってから私を見下ろす櫻井さんは唇の端を持ち上げて笑う。

「じゃあ会計してくるから、ニノと外出て待っててよ」

「え、櫻井さん、お金…」

「じゃ」

言いかけた私の言葉を最後まで聞かずに櫻井さんは伝票を持って行ってしまう。

その背中を見ていたら二宮さんが最後の一口日本酒を飲み切ってから言った。

「いいよAさん、翔ちゃんが出してくれるみたいだし。どうせいつもそうでしょ？」

「そうですけど…」

「後輩と女の子にはお金出させないって翔ちゃんのポリシーだからね。ほら、Aさんは後輩の女の子ですから」

確かにその通りなんだけど。

「さ、行きましょう」

「…はい」

櫻井さんのポリシーは知っている。

実際櫻井さんと食事に行ってお金を払ったことは一度もない。

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