シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ16)

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Episode2 -5 ページ16

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真っすぐ帰宅すると家に付くのは七時過ぎになる。

だけど今日は明後日から始まる移植作制作の準備のためちょっと忙しかったから帰ってくるのが遅くなってしまった。

リビングに荷物を降ろしたときには時計の針は八時を回っていた。

智兄さんはまだ帰ってきてないようだ。

ぐるりと肩を回しながらエコバッグの中に入れ込んだ帰りに買い出ししてきた材料を机の上に広げる。

夕飯を作っていると玄関の開く音が聞こえた。

「おかりなさーい」

「ただいま犀」

リビングに入ってきた智兄さんが私の顔を見てふにゃりと笑う。

「うん。お前がそうやって料理作ってんの見ると疲れとれるなぁ」

「お疲れ様智兄さん。ごめんね、今日は簡単にカレーなの」

「いいよ。遅かったんか？」

出しっぱなしの私の荷物を見て智兄さんが言う。

「ちょっとね。新しい仕事が始まってさ」

ルーを溶かして火にかけお玉でかき回しながら着替えている智兄さんに今日の出来事を報告する。

その間に完成したカレーをよそった器をテーブルに並べていただきますをすると、智兄さんは一口食べてから「うまい」と呟いた。

「よかった」

「んで、明後日から始まるのか」

「そうなの」

自分のカレーを口に運びながら私は頷く。

福神漬けをぽりぽり噛みながら智兄さんは「そっかぁ」とちょっとだけさみしそうに眉を下げた。

「またしばらく忙しくなるな」

「夕飯作れなかったらゴメンね」

「いいよ。俺が買って帰ってくるか作るかするし」

「あ、それとね、先方側と飲みに行ったりってことが増えるかも」

飲みにケーションという言葉があるくらいだ。

飲みの場と言うのはビジネスと切っても切り離せない。

そう言うと智兄さんはこくんと頷いた。

「わかった。門限までには帰ってこいよ」

「わかってるよ」

門限零時。

大人になっても続いている私と智兄さんの決まり事だ。

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