シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ27)

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Episode4 -5 ページ27

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智兄さんのことだから、私が門限になっても帰ってなかったら怒涛のように電話がかかってくると思う。

あの眉を下げて心配そうな怒ったような顔をして。

「そうですか……」

一度二宮さんの視線が地面に落ちた。

お店から漏れる明かりと街灯に照らされた二宮さんの白い頬はまだ赤く染まっている。

ふと伏せられていた目が私の顔を見る。

暗い夜の中では、その瞳に映った景色は分からない。

「お兄さん、困らせてみましょうか」

「……え？」

私は何を言われているのかわからなくて、数秒の間をおいてからそんな声を出した。

少しだけ首をかしげるように私の目をのぞき込んでいた二宮さんは私の反応に自虐気味に薄く口元に笑みを張り付ける。

「いたずらにもならなそうですね。すみません。酔っぱらいのたわごとです。忘れてください」

「……いや、その…」

思ったよりもその声が真剣で、私は口の中でもごもごと声を発した。

どうこたえるべきかがわからなくて、視線を地面に落とす。

「そんなに困らせるつもりじゃなかったんですけど」

「……いえ、……あの…今はまだ……」

悩みながら何か言わなきゃと焦って口を開いたらそんな言葉がぼんやりと声になった。

二宮さんは伏せた瞼を持ち上げて私の顔を窺う。

「いつか、可能性ありますか」

「………」

私にはまだわからない。

期待させてしまうような返事をするのは、社交辞令みたいで良くないのかもしれない。

だけど私は、逡巡したあとちゃんと息を込めて声を出して頷いた。

「あります……お約束しましたから、思い出すまで付き合うって」

「……そっか」

安堵したような、そんな声で二宮さんは小さく呟いた。

止めていた息を吐き出すようなそんな息の多い声だった。

「おまたせ。……どうかした？」

櫻井さんは人と人との空気に敏感な人だ。

不思議そうに眉を寄せて私と二宮さんの顔を見る。

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