45−お忍び ページ45
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「私には二人の娘がいるの。どちらも昨日王子と踊ったんですわよ」
「そうか。して、その二人は?」
「奥に控えておりますわ。さ、どうぞ中へ」
どこか胡散臭い笑みを貼り付けた継母に言われるがまま、後ろに中流騎士を控えさせて上流の天元と杏寿郎騎士が代表で二人、屋敷の中に入っていく。
わざわざ合言葉を言うだけなのに玄関まで出迎えられないなんて……。
最後の最後で面倒な淑女だな、なんて天元は相変わらず心中で悪態をついていた。
「お待ちしておりましたわ、騎士様!」
「あら、王子よりイケメンだわ」
「二人ともはしたないわよ。座りなさい」
奥の客間で待ち受けていたのは、相当時間をかけてめかしこんだ二人の娘。
本来の美をまるきり無視した厚化粧に、正直な杏寿郎騎士は「う、」と後ろへ退いた。
対して天元はフランクに挨拶すると、面倒なのか敬語もつけず本題に移る。
「さて、時間が押してるから手短にな。王子は誰だ?」
「私から! 王子はとっても慈悲深く寛大な方よ」
「…残念、合言葉とはかけ離れてるな」
「そうに決まってる! 本物の王女は私なんだから!
私は、そうね。あの時…私を大好きな王子って答えたわ!」
「……はァ。最後もダメか」
天元が腰を上げる。
すると双子は「待って! 待って!」と仕切り直しを迫るのだ。
濃い顔で身を固めた彼女二人は、あの時出会った娘とはかけ離れている。
二人が違う事なんて一目瞭然だった。
「違うわ、そうよ! 王子はハンサムでダンスが上手いって言ったわ!」
「はあ? それは私が言ったのよ! 騎士様、私が本物よ!」
「話にならんな! 奥方、これで失礼する!」
諦め悪く言葉を連ねる二人を見かねて杏寿郎騎士は首を横に振る。
そしてそれを合図に天元も今度こそ立ち上がり玄関へと踵を返していくのだった。
「それでは奥方殿、お嬢さん方、失礼させて頂く」
「ええ、辺境の地までお越し下さり感謝致しますわ……」
玄関の扉に手をかけながら、そうお辞儀する継母。
そしてその手が重い扉を閉めるとき_
_継母は確かに、笑っていたのだ。
その違和感は天元騎士を使役する。
彼が閉まる扉に手を指し伸ばし、口を開いた、その時だ。
「――…待て」
「……?」
背中から聞こえた凛とした声。
継母も含む、そこに居た皆がその声の主を捜した。
…すると、騎士の内一人が、フードを取る。
「……実弥王子!」
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時