05−使用人 ページ5
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彼女が洗濯板の元へ向かうと、夕食の準備をしていた使用人達が持っていたドレスの量にあっと驚いた。
そして慌てて一人の使用人がその手からドレスを奪う。
「A様、また雑用を押し付けられたんですね!
お戻りください、私たちがしますから」
「いいの。洗濯したい気分だったから」
「本当に彼女達ときたら我が者顔でこの屋敷を使って…」
「今は姉様達も住んでるもの! 間違ってないよ」
「A様、どうかお休みになってください。私達の事はどうかお気になさらず…こんな汚い事を女性はしないんですよ」
「それじゃ貴方達もしないでしょ?」
ふふんといたずらっぽく笑った彼女に、使用人達は笑ってしまった。
家事も芸術も秀でたAは使用人だけに任せる事なく、自ら率先して食事や洗濯を手伝っていたのだ。
そんな彼女を嫌う使用人はこの屋敷には居ない。
「さ、夕食の準備ができましたよ」
「姉様達を呼んでくるね」
美味しそうなコーンスープの匂いが立ち込める台所を出て、エプロンをつけたまま階段を上がり奥の部屋へ向かう。
2階の姉達の部屋では、どちらが元いたAの部屋を使うか揉めていたみたいだ。
それを一瞥した彼女は先に継母を呼ぼうとその部屋を通り過ぎた。
「お母様…ごほん、奥様」
昼間の継母の発言を思い出して慌てて言い直すA。
ノックして扉を開けると物書きをしていた書類から顔を上げた継母と目があった。
「夕食の準備ができました」
「そう。…貴方今日も夕食を手伝ってくれたのね。私の部屋に汚れたエプロンをつけてくるなんて随分手伝いをするのが好きな様で感心するわ」
「はい…ありがとうございます」
すっきりとした笑顔を向けられてAもつられて微笑み返す。
そっと閉めた扉の中で、継母が軽蔑の目で彼女を睨んでいたのをAは知らない。
そして姉達の部屋へと戻り控え目に部屋を覗くといまだに喧嘩をしていたようだが、Aが入ってきたことで彼女達の怒りの矛先はAに向いた。
「何!? ノックもせずに入るなんて失礼ね!」
「いいえ、ノックはしたの。だけど姉様達が喧嘩をしていたから…」
「本当アンタって言い訳ばっかり。性の曲がった子よね」
「…ごめんなさい。夕食の準備が出来たことを、伝えたかっただけなの」
姉達に暴言を言われて切なく笑う彼女。
理不尽な事を言われるのには、もう慣れてしまった。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時