04−配達屋 ページ4
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茶色いハンチング帽に薄汚れたチョッキ、そして黄色のサスペンダー。
動物の友達の他に、Aには彼が居た。
お調子者の善逸は隣町で配達屋を営んでいる店の息子だ。
よく海外へ行く父の手紙を配達してくれているから、いつのまにか彼とは顔馴染み以上に仲が良くなった。
「おはよう善逸、久しぶり」
「よっA。今日も可愛いね。で、旦那様今日出発だったろ?
寂しくないかなって様子見に来たんだ」
「ありがとう、だけど平気よ。新しいお友達と話してた所なの」
「また動物か? そういえば最近森に遊びに行ってないな」
「ええそうね。きっと森にいる彼らも寂しがってる」
善逸とAは子供の頃から森で遊ぶのが好きで、魔女のいる極東の森を避けて様々な森で動物達と共に過ごした。
耳の良い善逸も、動物と話が出来る一人である。
Aの淡い金髪が風で揺れる。
_直後、2人の姉が喧嘩しながら2階のドアを蹴破って出てきたのを確認した善逸は「げっ」と声を上げた。
「とっとと消えて!」
「目をえぐり出してやる!」
大量のドレスを手に部屋から出てきた姉達は玄関にいた善逸を見ると床にドレスをばさっと勢いよく落として黄色い歓声を上げた。
彼女達は善逸に目がないのである。
善逸は女好きだがどうも醜い彼女達だけは好きになれなかったらしい。
急いで地面に置いていた荷物を手に取ると踵を返して屋敷の門をくぐる。
「それじゃA、またな! 旦那様が帰ってきたら森に遊びに行こうぜ!」
「楽しみにしてる! またね!」
「まってぇ善逸様!」
「お話したかったのに」
善逸の姿が見えなくなると、二人の姉はAの肩を小突いてフン、と鼻で彼女を小馬鹿にした。
そして妬ましい目で鋭く睨む。
「どうして善逸様はアンタだけに挨拶していくの?」
「来たなら呼びなさいよ。本当意地悪なんだから」
「ごめんなさい、だけど姉様達はいつも来客に出ないから」
「余計なお世話よ。感じ悪いわ!」
「ドレス落としたから洗っておいて!」なんて言葉を残して彼女達は大広間へと行ってしまった。
まるで二人は…いや、継母も合わせて彼らはAを使用人のように扱うのだ。
Aは広間に消えた姉上を人睨みすると、階段に空しく落ちた山積みのドレスを持ち上げて洗濯へと向かったのだった。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時