24−ドレス ページ24
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今日はいつになく台所の呼び鈴が絶えず鳴る。
何故かって、今日は舞踏会当日なのだ。
姉達二人が小間使いとしてAを放っておくわけがない。
「A!? いるんでしょ、早く来なさいよ!」
「はい、姉様ただ今」
「私のドレスを先に着せて!」
「今すぐ行きます」
彼女達の絶え間ない呼び鈴を元に階段を駆け足で上がればキンキンと甲高い声が彼女の名を叫んでいた。
息を吐く暇もなく彼女達からクリノリンを渡される。
美しくドレスを着こなした姉達は楽しそうに舞踏会での作法を真似てくるくると回っている。
「麗しのテオドラ嬢、僕と一緒に踊っていただけますか?
ええ、勿論よ王子様! お手をどうぞ、お姫様…やだ〜!」
「はあ? 王子は私と踊りたいに決まってるわよ!
アンタは引っ込んでなさい。ららら〜…」
二人でオモチャのティアラを取り合って引っ張り合っている。
見た目は美しいのに、心が醜い姉達。
そんな二人の様子を見て、Aは「…王子様はどんなお方かしら」と遠くにぼやける城を眺めた。
「どんなお方かって?」
「どんな男でもお金がありゃいいわ」
「どんな人か知りたくないの?」
「人柄に興味ないもの」
そんな事を言って彼女達は尚も鏡の前でどちらが王子に見そめられるか喧嘩を再開した。
雑用は終わったようで、Aは放置されてしまう。
そっと気付かれないように退出すると軽い足取りで屋根裏へと戻った。
「今日の夕方までにドレスを仕上げないと…!
ああ、楽しみだわ…! きっとお城の舞踏会はキラキラしてて、ゴージャスで…すごく楽しいんだろうなぁ……」
『僕たちも手伝うよ!』
「ありがとう、ネズミさん達」
小さな友達の協力の甲斐もあってか、準備は着々と進められた。
そんな間にも、Aは時折姉達に呼ばれたり継母に雑用を任されたりと順調に事を運ばせてはくれなかったが。…彼女には強い味方がいたおかげで、何の滞りなくドレスは完成したのだ。
「ちょっと。何故Aは見送りにこないわけ?」
「きっと私達が羨ましくて僻んでるのよ」
「行くわよ、二人とも……」
夕刻を知らせる馬車が到着した。
嬉しそうに目を細める継母が、綺麗に着飾った二人を連れて玄関の扉に手をかけた、その時だった。
「…まって!」
3人を呼び止める澄んだ声。
階段から駆け下りてきたのは、ピンクのドレスを着た愛らしいAだった。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時