03−屋根裏 ページ3
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「それじゃ今すぐにでも部屋を移るね。夜には使えるようにしておくわ」
「ありがとうA」
「いいの。それじゃ私はどこに移ろうかな…」
支度をしようと、彼女が継母の元を離れた時、「そうね」なんて意地悪な声が甲高く上がる。
振り返った継母の顔は相変わらず嫌になる美しさだった。
「屋根裏がいいわ。他の部屋は来客用にいつか使うかもしれないし、彼が帰ってきた時の土産を置く部屋だって必要なんですから」
「…屋根裏部屋? でもあそこは空調も管理も…」
「よく考えたら屋根裏が一番この屋敷で広いじゃない
良いわねA。あそこで今よりももっとのびのび暮らせるのよ」
「お母様待って」
「ああ、それと」
話はもうこれでお終い、とでも言うように戸惑うAを置いて立ち上がる継母。
追い討ちをかけるみたいに、彼女はAに指を突き刺して冷ややかに見下ろした。
「今後は私を奥様と呼ぶように」
_ガタン、
必要最低限の物だけを部屋から持ち出して長い階段をゆっくりと上がる。
埃っぽい階段の先にはぼろの扉が立て付けられていて、恐る恐る開けば古い音がして開いた。
恐らく誰も長い間踏み入っていない場所。
お陰で蜘蛛の巣は張っているしどこからかネズミの声も聞こえる。
「…うん。掃除のしがいがある!」
Aは荷物を下ろすとぐっと伸びをして部屋を片付け始めた。
見る見る内に片付いていく屋根裏。
汚れたカーテンを取り払うと、南向きの窓から眩しい太陽が入り込んで幾分か明るくなる。
彼女の気分も少し上がる。
「…わあ、可愛いネズミさん。はじめまして」
『この部屋に住むの?』
「怖がらないで。少しの間この部屋を借りるだけだから
仲良くしましょう」
『もちろんだよ!』
何匹かのネズミがカーテンの影から出てくる。
彼女は生まれつき動物と会話ができたのだった。
大抵の動物は会話ができるAを気に入り、懐くのである。
友達と呼べるのは、彼女には動物だけだった。
_リンゴーン…
「Aー! 来客よ、出て頂戴ー!」
「っ、はい、ただいま」
ネズミ達と会話を楽しんでいると1階の玄関のベルを鳴らす音の直後、姉のキンキン響く声が最上階の屋根裏まで届いた。
慌てて窓から身を離して階段を駆け下りるA。
息をつく暇もなく扉を開けて出迎えると、そこには見知った顔があった。
「…善逸!」
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時