16−目覚め ページ16
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チュン、チュン_
「ううん…っは、いけない…! 寝過ごしちゃった!」
側におずおずと寄る小鳥のさえずりに目を覚まして、それから朝日が十分に森に差し込んでいるのを確認してがばっと起き上がる。
私が大きな声を上げてしまったから、気持ちよさそうに隣で眠っていたオオカミさんも驚いた様に毛並を逆立てた。
「A…? どしたァ…」
「ご、ごめんなさい起こしてしまって…! 私もう行かないと!」
「行くって? もう帰ンのか? まだ早ェだろォ」
「姉様達が起きる前に暖炉の火を焚かないといけないの」
いつもベッドまで起こしに来てくれる小鳥さん達は、わざわざ私を探しに来てくれたのかな。
だけどオオカミの実弥の姿をみて怖がっている。
彼はその小鳥を見て不機嫌そうに尻尾を私の腰に巻きつけて唸った。
「…そいつら、毎朝お前の事起こしにくんのか」
「え? ええ、そうなの。いつの間にか私を探し当てて側に寄ってきてくれるの」
「…そーかよ」
彼は何だか不機嫌そう。
寝起きに側であんな物音を立てられれば誰でも不機嫌になるわね。
太陽は既に高く上っている。
慌てて立ち上がると、彼も呼応する様に起き上がった。
「…乗ってけェ。急ぎだろ」
「え? 良いよすぐそこだから」
「良いから」
「本当に大丈夫なのよ。貴方起きたてでしょ」
「ああ。まだ夢ン中だ」
そうは言ったものの、私に突進してきて強引に私を担ぐ実弥。
足が地を離れた恐怖に慌てて実弥の毛にしがみつく。
「さ、実弥…!」戸惑い気味に彼を牽制すると、美しい毛並が太陽に反射して透けた。
「…だから、まだ夢見心地で居させろォ」
「えっどういう意味…?」
「まだ側に居てェ」
その発言に思わず顔に熱が集まった。
今まで森の動物達に散々言われて居た言葉なのに。
こんなにも違う感情を抱いたのは初めて。
駆け抜ける時の朝露が頬の熱を冷ましてくれた。
「_本当にありがとう。ここで良いわ」
「そうかィ」
「それじゃあまた…」
丁寧に腰を折って私が降りやすい様にしてくれた彼。
すこし汗ばんだ鼻元を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じる。
…離れたくない。昨日の夜もそう感じた。
お願い、オオカミさん。
私を引き止めて。
「…A」
「…!」
願っていた彼からの呼びかけに勢い良く振り返った。
そして見えたオオカミさんの顔つきは、何だか寂しそう。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時