LOVE YOU , LOVE ME

Distance with you -hk side- ページ1

-




薮はずるい。



『今日、仕事終わったら家来て。』


仕事が終わってスマホを確認すると薮からこんなメッセージが届いていた。

相変わらず無愛想だな、と思いながら


『了解。』


と張り合うかのように薮よりも無愛想に返してやった。


車の中でマネージャーに明日の予定を確認して、今日から明日にかけての行動を頭の中でざっとシュミレーションする。

薮の家に行ってすることなんていつも同じだから、シュミレーションだって悩むことなく出来てしまう。



…薮の家で"いつも通り"じゃないことが起これば良いのに、なんて一瞬浮かんだ期待はすぐに打ち消した。



そんなバカな期待をするのは無意味なことだと、この数年で痛いくらいに分かっているから。

それでも呼ばれたら行ってしまうのは、きっと、まだ少し期待しているから。


光「バカだな、俺」


数年経っても進歩しない自分を嘲笑う。


マ「八乙女くん！」

光「っあ！はい！？」


この数年間を思い出して考えに耽っていると、突然名前を呼ばれた。


マ「やぁっと気付いた…。家、着いてるよ？」

光「え、あっ、はい」


着いてから何回も呼ばれていたらしく、マネージャーも呆れ顔。

降り際にそんなに考えこんでどうしたの？と心配までされてしまった。



光「いえ、何でもないです。ちょっと眠かっただけで」


そう咄嗟に嘘をつくと、そうなの？じゃあ今日はちゃんと寝なさい、と肩を叩かれ思わず苦笑い。

そんな俺には気付かずにドアは閉まり、ブロロロ…と車は行ってしまった。






自分の部屋に帰ってすぐにシャワーを浴び、明日の荷物を用意して家を出た。


今度は自分の車に乗り込んでエンジンをかける。


普段はここでナビを設定するけど、薮の家はナビがなくても行けるようになってしまった。


光「さっみぃ〜…」


外の冷気ですっかり冷えてしまっていた車内が快適な温度になるのを待って、お気に入りの音楽をかけて、車を発進させた。



-

◆→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す