Beat② (ページ28)

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ru side

ふらふらとした足取りの岩本くんは、本当に怖くて。
あぁ、呑まれてるんだなって。
右腕から首元まで広がる、蔦状の痣のような紋様。
真っ直ぐこっちを見た目が昏くて、吸い込まれそうなくらい不思議と魅力的に見えた。

iw「……」

何も言わない岩本くんが俺の方に向かってくる。深呼吸して、それを避ける為に柱を回って別の扉の入り口まで走る。普通ならすぐに方向転換するはずだけど、今は急に止まることが出来ないらしくて避けられた。
岩本くんの能力は、機能の上限を外すこと。今のだと、身体そのもの、体力とか、速さとか。そういったのを解除してるんだと思う。実際何なのかは聞かなきゃわかんないし、大体の予想がつけば多分、避けるくらいなら出来るかも。
とはいえ体力の上限がないのはめっちゃ面倒だし、あんまり長い間これだと身体が怖い。

ru「……、ごめんなさい。どうか上手く、いきますように」

小さく唱えてから、ごめんなさいって謝っておく。マジで無事な保証がないもん。阿部ちゃんは出来るって踏んで俺に頼んでくれたけど、どうなるかなんてわからない。
せめて時間稼ぎになるくらいには、上手くいきますように。

また俺の方に突っ込んでくるのを、今度は避けない。

sk「ラウール!?」

慌ててる佐久間くんの声。失敗したら、助けてね。

勢いのまま殴ろうとする岩本くんの前に手を出して、強くイメージする。
今侵食しているそれが、真っ白に元通りになるように。
その拳は俺には届かないし、黒く深く染まった色を取り払うように。
頬を伝う気持ち悪さを感じながら、視界が眩しくなって思わず目を閉じた。

iw「…、ラウ…？」

目の前から聞き慣れた声がする。
ちょっと目を開けたらもう元通りの色。
あぁ、成功したんだってわかった。
安心してふっと力が抜ける。
後ろの扉に寄り掛かって、そのまままた目を閉じた。

『ラウール！』