Beat (ページ10)

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Moon ページ10

ab side

窓から差し込む月明かりが眩しい。

他のみんなは、もうとっくに眠っているだろう。
そっとリビングを抜けてベランダへ出てみれば、雲のない夜空を見上げる。
そして隠れていたつもりだろうか、自室を出たすぐ後から着いてきていた足音の主を振り返った。

sk「あ、いや、たまたま見掛けて…」

ab「まだ何も言ってないじゃん」

sk「…ごめん」

ab「心配してきてくれたんでしょ？」

案の定、佐久間は頷く。
どうせそんなことだろうと思っていたから、自分の傍へ来るように手招きしてみる。
遠慮がちに近寄って来るのがいつもとは全く違くて、少しだけ笑えてしまう。

sk「やっぱり、まだ抜けてない」

佐久間が後ろから髪先を摘んだのに気付いて顔を向けようとするけど、佐久間の表情は見えない。
珍しく沈んでいる声に、どうして自分の”それ”はこんな形でしか現れないのだろう、と思う。
もっと分かりづらくて、気付かれにくかったら、佐久間をこんな風に悲しませはしないのに。

いや、きっとその方が彼は悲しむのだろう。
頭では理解している。でも、どうしたってそう思わないではいられない。
それ故に苦しむ仲間たちもいる。

それでも、そう望まずにはいられなかった。

ab「大丈夫、今は何ともないよ」

嘘なんかじゃない。

けれど佐久間は、月光に照らされて濃く浮かぶ、緑に染まった俺の髪先を暫く撫で続けていた。