・ ページ8
kj「阿部ちゃん、まだ来おへんの？」
ab「狙いはついてる。もうすぐだよ」
男は1人で、外壁に背を預けていた。
手にしたナイフをくるりと回して、間延びした声で無線へと話しかける。
表情は不安そうではあるが、どうも高揚しているのが声のトーンから伺える。
それから少しして、数名の足音と慌てたような声が飛び交い出す。
ab「康二」
kj「わかっとるで！任せてや」
男は明るく笑う。弄んでいたナイフを握り締めて飛び出した。
kj「はいは〜い！驚いてる、そりゃそうやんな？逃げた先に待ち伏せだなんて運悪いもんなぁ。でもだーれも悪くないで？偶然たまたま、俺がおっただけなんやから」
現れて早々べらべらと喋り続ける男に、足を止めた敵兵は呆気にとられる。
だがその物言いから仲間ではないことは理解したのだろう、一斉に銃を構えた。
kj「おわ、怖っ！やめてや、びっくりするやろ？」
わざとらしく震え上がる男は妙に身軽だ。
手にしたナイフと少し膨らんだポケットを除けば、とても戦場に出る者とは思えない。
敵兵は仲間と顔を見合わせ、合図を出した。
合図と共に引き金を引く。放たれた銃弾は全て男へ向かって一直線、のはずだった。
kj「あらら、使い切っちゃったん？ちゃんと確認せなあかんよ？」
弾が出ない。何度引き金を引こうと、カチャカチャと音が鳴るだけだ。
弾切れだろうか。急いでいて、確認するのを怠ったせいか。
慌てて補充しようと各々が銃身へ手を掛けると、耳を劈くような爆音が響く。
直後に感じた熱に咄嗟に瞑った目を開ければその手は血に濡れていた。
kj「ざーんねん。油断禁物、他所見厳禁やで？」
男の握ったその刃先が喉を撫でる。
吹き出す紅から身を捩らせて、残りの兵士も同じように。
そうして男は、楽しげな声を上げた。
kj「んふふ、ほんまに”不幸な”方々やったなぁ！」
向井康二
「S」唯一の隣国出身。遊撃、他。
「それ」は酷く不安定だ。
彼の思うままであるが故に、彼の意思ではない。
途絶える時まで、揺らぐことなど有り得ない。
能力名「＿＿＿＿」
代償「＿＿＿＿」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 833人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しあ。 | 作成日時：2020年9月29日 19時
