伝えたいのに伝わらなくて (ページ29)

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HERO ページ29

助けて、助けて、助けて。

何度声にならない声で叫んだだろう。

はやく。だれか。

何度雫が零れただろう。

「さっさと来い!!」

貴「いやっ、!」

髪を引っ張られて、抵抗すれば殴られて。

痛い。

怖い。

だれか、お兄ちゃん、お兄ちゃん。

紀久、コブラ。ロッキー、

スモーキー。

ジェシーっ、

……良樹。

どれだけ願っても誰も来なくて。

ああ、もう無理なんだ。
私、、

「それ以上触ったらぶっ殺す」

低い声。
いつもと違う声。聞いたことがない。

なのに、どうしてだろう。
貴方の声だって直ぐにわかってしまう私は

重症なのかもしれない。

貴「良樹……っ、」

村「遅くなってごめんね、Aちゃん。」

気づけば周りに皆がいて。
凄い速さで敵を蹴散らしていった。

コ「怪我は。」

貴「平気… 皆、来てくれたの…?」

タ「当たり前。皆お前のこと大好きだから。」

皆の優しい笑顔にほっとして、

涙が流れた。

久しぶりかもしれない。こんなに声を上げて
子供みたいに泣きじゃくったのは。

貴「うっ、ぁ、っ、、」

村「……よく頑張ったな。怖かったよね、」

温もり。

何が起こっているのかは最初分からなかった。

良樹のふわりとした香りに包まれて

良樹の体温がゆっくり伝わる。

暖かい。

抱き締められてるんだ。やっと実感した。

そして良樹はそっと私の額に口付けて言ったんだ。

村「………俺さ、

Aちゃんのこと好き。」