またキミと会えるなら※現パロ ページ4
「シャンクス、ここは私が出すから好きなものを飲みなさい」
「ありがとうございます」
そう言うと社長は出迎えた馴染みの女と仲良く席に向かう。
後に続きながらさっと店内の様子を伺うと豪華なシャンデリアに質の良いソファが並ぶ洒落た内装で、一目で高級クラブだと認識した。
「初めまして、Aです」
俺の酒の好みを聞くと無駄のない動きで酒を作り上げどうぞと俺の目の前に置いた。
社長は俺を放ってとっくに乾杯し話し込んでいる。
「Aさんもどうぞ」
隣に座った女を放置することも出来ないので飲み物を勧めると彼女は礼を言い自分の酒を黒服に頼んだ。
過度な露出は抑えたネイビーの上品なドレスにシンプルなネックレスを身につけ、髪を綺麗に巻きおろした姿は彼女にとても似合っていた。
グラスを受け取ったAの長いまつげはくるりと上を向き、大きな二重の目がまっすぐ俺を見つめてくる。
「乾杯」
俺もグラスを持ち上げ静かにグラスを合わせるとお互いに一口飲んだ。
「社長はよく来るのか？」
「そうですね、お一人でもいらっしゃいますしお連れの方がいらっしゃる時もあります」
「いつもあんな感じか？」
「えぇ、でもうちにいらっしゃる時は良い事があった時だといつも嬉しそうに話してますから今日はシャンクスさんと良い時間を過ごされたのでしょうね」
「……光栄だな」
にこりと微笑み何でもなさそうに言う彼女に驚いた。
俺は名乗っていないにも関わらず社長が呼んだ名を記憶し普通に会話する。
常連である社長の人柄は言わずもがなだが、俺が社長や店にとっても良い相手だと判断し素直に褒めるとても気のきく良い女だ。
昼間はOLとして働いているAは奨学金の返済や親への仕送りのために副業として週末だけ会社に内緒で働いているらしい。
水族館に行くのが好きだと言う彼女に海外でダイビングをした時の話や写真を見せれば、目をキラキラと輝かせ楽しそうに話を聞いてくれるのでとても楽しい時間を過ごした。
「名刺を貰えたのかい？」
「えぇ、でも初見の客には普通渡しますよね」
「私も何人か連れてきたが君が初めてだ」
「は？」
「人気はあるんだが躱すのも上手くてね、店に通って一年くらい経つが渡してるのを見かけたのは数回だよ」
笑いながら俺の肩をポンポンと叩きタクシーに乗り込んだ社長に慌てて深く礼を言い見送る。
帰り際にそっと渡されたAの名刺を思い出しながら、彼女の期待に応える水族館は何処かと頭を巡らせた。
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作者名：ちょこ | 作成日時：2021年9月29日 1時
