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島が見えなくなるまで眺め続けたAは大きく深呼吸をすると海の匂いだ、と笑った。
「何か手伝えることありますか?」
「A〜もう少しゆっくりしようぜ」
「お頭は少しAを見習え」
Aは俺を素通りしてベックに聞きに行くし、俺がAに着いていってベックに小言を貰うまでがいつもの流れだった。
いつの間にかそんなやり取りが当たり前のようになっていたが、Aが仕事を与えられることは滅多になく俺と食堂か東屋で過ごすのだ。
「そうだな……たまには手伝ってもらうか」
「はい!」
「え?」
今日も断ると思っていたが、珍しくベックはAに仕事を与えた。
それも、俺にとって一番最悪な形で。
「ほら、アンタが手を動かさないといつまで経ってもAは解放されないぞ」
「くそ……覚えてろよ」
「シャンクス、ここ間違ってるよ」
「………」
食堂で書類を睨み付けながら時折ペンを走らせる。
食料や備品、敵船から奪った財宝などの収支の一覧でいつもはベックが確認して纏めているものだった。
Aから計算ミスや文字の間違いを指摘される俺を、向かいの席で煙草を吸いながらニヤニヤと眺める男に思わず舌打ちをした。
「シャンクスって意外と綺麗な字を書くんだね」
「そうかぁ?」
「細かいことは気にしなさそうだから、もっと適当な字を書くかと思ってた」
ごめん偏見だった、と苦笑いするAにふと思い出したことがあった。
「ガキの頃に口煩く言われたからなぁ……海賊だからって舐められたくなかったら文字を読めるようになれ、字も綺麗に書けってな」
「それは良い先生だね」
「間違うと容赦なくぶん殴ってきたがな」
「………。
まぁ、知識は財産だし文字を読めて困ることはないから」
「……そうだな」
「ベックさん、終わりましたよ。確認お願いします」
Aに渡された書類をパラパラと捲りながら文字を追うベックは全てに目を通すと問題ない、と言った。
「アンタもやれば出来るじゃねぇか」
「俺より得意な奴がいるんだからわざわざ俺がやらなくたって良いだろう」
「字を書けて計算も出来る賢い頭の方がクルーの士気も上がる」
「俺のことバカにしてるな?」
「また始まった」
「A、終わったなら茶でも飲むか?」
「うん、頂きます」
こんな風に言い合いを始めた俺達を放置してクルーと談笑するA達に絡みに行くのも、またいつもの流れだった。
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ちょこ(プロフ) - kaito11さん» ありがとうございます!引き続き続編もよろしくお願い致します! (2023年5月6日 22時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
kaito11 - この作品大好きです!これからも更新楽しみにしています! (2023年4月28日 18時) (レス) @page50 id: a5ae7a5cae (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - NATSUさん» いつもありがとうございます! (2023年4月15日 17時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
NATSU(プロフ) - 続きがとても楽しみです。 (2023年4月14日 22時) (レス) @page45 id: 01b4412dd0 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 白雪さん» 初めまして、大好きと言って頂けて本当に嬉しいです。更新の励みになりました! (2023年2月27日 21時) (レス) @page28 id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作成日時:2022年12月18日 19時