１３４ ページ35
.
数日後、俺達はダンテル島という様々なデザインで綴られたレースが有名な島に上陸していた。
特産品だからか島の女達はレースのブラウスやスカート、ワンピースを着ている者が多かった。
「活気のある島だね」
「ああ、どうやら近々成人する隣国のお姫様にレースを献上するってんで張り切ってるらしい」
「なるほど」
ベックとAの会話を聞きながら街並みを眺めていると、ある店のウィンドウに目が止まった。
真っ白なワンピースとヒールが飾られたウィンドウは、それらを引き立たせるために背景も上品に纏められていた。
バッグやアクセサリーもシンプルで上品なものが飾られていたが、もう記憶にない。
目に焼き付いてしまったあの真っ白なワンピースを追い払うように早く酒が飲みたいと呟くと、全員から今開いてる店探してるだろと突っ込まれた。
俺達のいつものやり取りに面白そうに笑うAの様子を伺えば、先ほどより近付いた洋服屋のウィンドウを見て一瞬だけ目を見開き眩しそうに目を細めた。
すぐに外された視線は街の中心部を捉えたが、間違いなくAはあのワンピースに目を奪われていた。
そしてあのワンピースが俺の目に焼き付いて離れない理由も分かった。
あれを見た瞬間、俺は一番にAが身に付けた姿を想像したのだ。
少し伸びてきたAの黒髪が真っ白のワンピースと絶妙なコントラストを生み出していた。
あれは、Aのための服だ。
そう思わずにはいられなかった。
明らかに女物しか置いてないような洋服屋にAは入ろうとしないが、目を奪われたのなら話は別だ。
俺だってあれは他の誰でもなくAが一番似合うと思うのだから、手に入れるしかない。
飲み始めても気になってしまい、すぐに店を抜け出した俺はあの洋服屋に駆け込んだ。
店員にAの身長や体型をそれとなく話し、あのワンピースやヒールのサイズを確認させる。
女に送るにしては小さい身長に店員は子供へのプレゼントかと聞くので、世話になった人のガキだと嘘をついた。
成長するにつれ航海の話だけでなく物をねだるようになったと困ったように笑って見せれば、小さくたって女とはそういうものだと諭された。
プレゼント用に綺麗にラッピングされたそれを持って店を出ると、他の店員がウィンドウの洋服を違うものに変えていた。
雰囲気の変わったウィンドウにホッと息をつき、船に戻ると俺のクローゼットに隠したのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 530人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ(プロフ) - kaito11さん» ありがとうございます！引き続き続編もよろしくお願い致します！ (2023年5月6日 22時) (
レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
kaito11 - この作品大好きです！これからも更新楽しみにしています！ (2023年4月28日 18時) (レス) @page50 id: a5ae7a5cae (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - NATSUさん» いつもありがとうございます！ (2023年4月15日 17時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
NATSU(プロフ) - 続きがとても楽しみです。 (2023年4月14日 22時) (レス) @page45 id: 01b4412dd0 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 白雪さん» 初めまして、大好きと言って頂けて本当に嬉しいです。更新の励みになりました！ (2023年2月27日 21時) (レス) @page28 id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこ | 作成日時：2022年12月18日 19時
