１２５ ページ26
.
「シャンクス、おはよう」
「ああ、おはよう」
鷹の目と海へ出て何を話していたのか気になってしょうがないが、珍しくフードを被ったAをじっと見つめる。
そんな俺を不思議そうに見つめ返してきたAに、苦笑いを返すしかなかった。
「どうした？」
「ねぇ、シャンクスとミホークさんが手合わせするの見てみたいんだけど……駄目かな？」
こてんと可愛らしく首を傾げ聞くAは、当然俺達が繰り返してきた死闘のことを知るわけがない。
本気で殺り合ったらこんな小さな無人島など一瞬で消し飛ぶくらいには激しかった記憶がある俺達の手合わせが見たいだなんて、一体どういう風の吹きまわしだろうか。
「この間、腕が鈍りそうだって言ってたじゃない。
ミホークさんなら肩慣らしの相手に不足はないでしょ？」
「そりゃあ、まぁ……そうだけど」
「ね、駄目かな？」
「そうは言ってもあいつがなぁ……」
少し離れたところで俺達の会話を聞いてるであろう鷹の目を見れば、我関せずとでも言うかのように顔を反らされた。
「……ほら、いつも戦闘が終わるまで私は隠れてるでしょ？
シャンクスがどんな風に剣を振るって皆を守っているのか見てみたいの。
これからのために、私はそういう所からも目を背けちゃいけないと思うんだ」
真剣な顔でまっすぐ俺を見つめるAは、いつ何処で戦禍に巻き込まれるか分からないこの世界を一生懸命受け止めようとしていた。
そんなAの黒い瞳に映る俺は酷く情けない顔をしているように見えた。
Aを害する全てのものから守ってやりたいと思う気持ちは俺のエゴでしかなくて、Aはちゃんと自分の足で立って歩いていけるのだ。
そんなことは、あの約束を交わした日にとっくに分かっていたはずなのに。
「……よし、分かった」
覚悟を決め愛剣を手に取ると鷹の目に近付いた。
「話がある、ちょっと付き合え」
俺とAにチラリと視線を送った鷹の目が無言で歩きだしたので後を追う。
Aから距離を取ると俺は鷹の目に向かって剣を構えた。
しばらく睨み合ったまま一ミリも動かず、ただ静かに時が流れていく。
小さく吐き出した息と共に踏み出し、剣を交えると鷹の目がニヤリと笑った。
「気になるか？」
何を？とは聞かないが、ただ痕を付けた“だけ”と分かっていても気分の良いものではなかった。
「お前を本気にさせるには十分すぎたな」
「二度目はないからな」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ(プロフ) - kaito11さん» ありがとうございます！引き続き続編もよろしくお願い致します！ (5月6日 22時) (
レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
kaito11 - この作品大好きです！これからも更新楽しみにしています！ (2023年4月28日 18時) (レス) @page50 id: a5ae7a5cae (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - NATSUさん» いつもありがとうございます！ (2023年4月15日 17時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
NATSU(プロフ) - 続きがとても楽しみです。 (2023年4月14日 22時) (レス) @page45 id: 01b4412dd0 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 白雪さん» 初めまして、大好きと言って頂けて本当に嬉しいです。更新の励みになりました！ (2023年2月27日 21時) (レス) @page28 id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこ | 作成日時：2022年12月18日 19時
