２３ ページ24
.
ザクッ
俺が止める声を無視してナイフで勢いよく髪を切ったAは、切り落とした髪を海へ投げ捨てた。
ピリピリしていた仲間達もあんぐりと口を開け驚いていた。
返されたナイフを受け取りながらAが少し複雑そうな顔をしていることに気付き、本当は切りたくなかったのではないかと感じた。
何も言わずしばらく海を眺めていたAは、俺に向き合うと頭を深く下げた。
「あの時は助けて頂きありがとうございました」
顔を上げたAは俺が何か言うより早く話し始めた。
「私、気付いた時にはあの状態で。
あの場所が何処かも、どうやって来たのかも分からなくて……
事が済んだら、殺されるのかなって思ってました」
まっすぐ俺を見つめる瞳が揺れ、少し震えた声で話し続けるAに手を伸ばしそうになって思い止まる。
「故郷の場所も、どうやって帰るのかも分からないんです」
海を眺めながら言うAの横顔は悲しそうなのにとても綺麗だった。
「だから、適当な島で降ろしてもらえますか？
仕事さえ見つかれば何処でも生きていけると思うので」
そう言って再び俺をまっすぐ見つめたAの顔はとても穏やかで、強いなと思った。
自ら命を絶つのではないかと不安になるくらい光を失っていた瞳は、しっかりと前を向いていて誰よりも生きたがっている。
「故郷が見つかるまで此処にいたって良いんだぞ？」
「……それは出来ません」
すぐにでも飛び立ってしまいそうなAを繋ぎ止めたくて言った言葉はすぐに拒否された。
「私は戦えないので足手まといになるだけです」
「そんなこと誰も気にしないさ」
「ダメですよ、シャンクスさんを慕っている彼らのためにもいざという時には私を切り捨ててもらわないと」
笑顔でそう言うAに俺は何も言えなくなった。
「私を守るために、この船の誰かが傷ついたり命を落とすようなことはしないでください」
「……」
「もし私が命を落とすような傷を負って助からない時は、シャンクスさんがとどめを刺してくださいね」
ナイフを持った俺の手を掴み自分の首元にあてがうAの目が本気で、何も言えなくなった。
俺達のために命を差し出す気でいるAに自分のことだけ考えろと言っても無駄だろう。
「……安全な島に送り届けるまで、俺達は許可なくAに触れないしそういう目で見ないと約束する」
俺の言葉にAはにっこり笑って頷いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 998人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ(プロフ) - planetbluep379さん» ありがとうございます！月末までバタついているので更新遅くなりますが気長にお待ちくださいませ🙇♀️ (2022年9月15日 10時) (
レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
planetbluep379(プロフ) - 続き待ってました✨嬉しい！頑張ってください😁 (2022年9月14日 9時) (レス) @page43 id: 6277eb3c9f (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - シンヤさん» ありがとうございます！ (2022年9月6日 16時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています😊 (2022年9月6日 0時) (レス) @page39 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 白雪さん» はじめまして、コメントありがとうございます。お話は順次公開していきますので気長にお待ちください🙏 (2022年9月2日 17時) (レス) id: b37865d1d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこ | 作成日時：2022年7月7日 23時
