【DQ11】亡国の悲劇

いわぬ信 ページ47

魔物は嫌いだ。

まず最初に、不便である事。

そして、野蛮な事。

……最後に、醜い事。

ハゲタカなのか蛇なのか分からないキメラという種族の体は、俺にとっては拷問も良い所だった。

なんだよ、俺前世で何かしたか？ 悪い事したら謝るから、人間の姿になりてえよ。

そう強く願った翌日、俺は人に化けることが出来るようになっていた。連れの２匹にも教えてやると、やはり才能の塊なのかすぐに人に化け、その体を使いこなしていた。


俺達は人の姿のまま、山を下った。しかしこの人化はまだ不完全だったようで、魔導士に正体を見破られた俺達は厳しい魔法攻撃を避けつつ、強い魔物にも襲われながらも、ある民家に辿り着いた。

もう賭けだった。どうせこのまま歩いていても死ぬんだ。それならここの人間が心優しい奴であることを願うしかなかった。

賭けには勝った。

その少女はAと言い、どうやら貴族のお嬢さんみたいだった。少女の父と名乗ったグルーニアさんもこれまた良い人で、畑仕事や書庫の掃除を手伝ってくれるなら屋敷に置いてくれると言ってくれた。

最初は警戒する俺達だったが、そんな態度に気分を害した様子も無く、彼らはただただ俺らを家族として、平等に扱ってくれた。

涙が出そうだった。

学の無い魔物の俺たちに、グルーニアさんは知識を与えてくれた。俺達が人化できると知ると、売り飛ばすどころか１匹でも生きていけるように人間世界での常識を教えてくれた。

本当に感謝している。

*

「早く行くもじゃ」

一番の臆病者だったミドンジャが、Aを助けに行くように言った。

俺は深く頷き、空へ羽ばたく。

空中にも敵はうじゃうじゃいて中々Aの元に辿り着けなかったが、裏門まで行くとグレイトドラゴンと相対する彼女が目に入った。

素早くジバリーナの上位魔法であるジバルンバを唱え、爪を振り下ろそうとした奴の動きを止める。

「よお、半年振りか」

俺の体長の倍以上ある強大なモンスターを前に、執念で覚えた毒や麻痺の状態異常を付与するブレスを吐いた。

はは、キメラとグレイトドラゴンでタイマンなんて、ふざけてるよな。

しかし、ここで尻尾巻いて逃げるわけには行かない。



*



……魔物は、嫌いだ。

人間は死体が残るが、魔物は死んだら光となって消える。


生きた証が、他者の記憶以外には何も無いのが魔物。


沈黙する黄金龍を尻目に、横たわるAの隣に寝そべった。







俺の騎士道、しっかり貫けただろうか。

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