【DQ11】亡国の悲劇

ないものねだり ページ42

「ねえ。でもそれって、すごく贅沢」



浮かんだ嫌な考えを振り払い、私はホメロスと視線を合わせた。

「……どういうことだ？」

「私にとっては、男性だという時点で大きなアドバンテージのある貴方が羨ましくて仕方ないから」

ホメロスはハッと目を見開き、そして地面に視線を落とす。

「そうか、お前が魔法に重点を置き始めた理由がソレか」

「まあ。魔法が使えなかった頃は精神が酷かったわ。街を歩けば貴方達の活躍ばっかりなんだもん」

「……すまない」

「ちょっと謝らないでよねー。私が惨めになるじゃん」

「ああ、そうだな」

「えっ酷くないそれ」


「……結局は、無い物ねだりということか」

顔を上げると、遊びがひと段落したらしい姫と魔物達がくっついてお喋りを始めていた。

「ま、そーいうことね。ホメロスも、あんまり気負いすぎちゃダメなんじゃない」

キョトンとした顔で私を見上げてくる。本当に何もわかってないんだろうか。他人の心には敏感なくせに、自分のことになると一気に鈍感になるのやめなさいよ。

「だって、貴方のこと待ってる人があっちにいるでしょ」

相手は王族なので指は差さないが。彼女達からホメロスに視線を戻す。

「それに、実力を認められたから双頭の鷲なんてカッコいいあだ名付けられてるんじゃん。ユグノアにもホメロスの名声が響いてるくらいだしさ」

私にも何かカッコいい通り名つけてほしいなー。隻腕の……は、義手つけてるからだめかな。じゃあ銀風のマジカルナイトとか……あー自分で言うけどダサいわ。

「……」

「そうだ、お守り、まだ持ってるわよね」

「あ、ああ。……これだろう」

「そうそう、まだ大事に持っててくれたんだ」

「まあな。大事な……友から、貰ったものだからな」

なんだかこのお守りに使った素材が凄くレアなんだよね。量産できないから、三つだけなんだけど。

少し言い淀んでから友と呼ばれたことに違和感を感じたが、まあ雰囲気のためちょっと溜めたとかそういう理由だろうと適当に理由をでっち上げて納得してみる。

「ふふ、ありがとう」

「っ……別に、逆に捨てる方がおかしいだろ」

「それもそうね。……あ、そろそろ移動するんじゃないかしら。私は他を見回りしてくるから、ここでお別れね」

�茲に熱を帯びたホメロスをニヤケながら見送る。



見送ってしまった。



元気に手を振る姫に一礼して、私はその場を後にした。

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