【DQ11】亡国の悲劇

勇者 ページ38

そろそろ王に貰った休暇も終わるし、里を出ることにした。私はいつもの３匹(今は人化しているので３人)を連れ、出口で長に挨拶をする。

「長い間お世話になりました」

「こちらこそ、里を救って貰って感謝の気持ちでいっぱいだ。また仲良くしてもらえると助かる」

「ええ。約束通り魔物と取引する魔物商を数人呼んでおいたから、人との関わりも今後持てるようになるわ」

「何から何まですまないな……」

深く頭を下げるモンスター 一同にこそばゆい気持ちになりながらも、私は笑って片手を挙げた。

「うん。じゃあ、元気でね」

「めが……ううん、A様、また遊びに来てください！」

「ｺｺﾊ ｷｻﾏﾉ ﾌﾙｻﾄﾃﾞﾓｱﾙ」

「ガウウ！」

「ものすごい絵面の見送りだな」

キイメがぼそっと呟くが、全くその通りである。

私達はギガンテス、グレイトドラゴン、ドラキー、キラーマシン、ドラキーの長老やサイクロプス、そしてキラーマシンの兄的存在であるらしいキラーマシン２らに手を振られ、里を後にした。

こんな経験は滅多にないだろう。






――





「……おお、A、無事であったか」

「よくぞ帰ってこられました」

私達はユグノアに到着すると、真っ先に城へと向かった。懐かしいと感傷に浸っている間などない。第一に優先しなければならないのは、王への報告である。

私は王様と王妃様の前に傅(かしず)くと、里での事を包み隠さず報告した。勿論、あの魔人の事も。

二人は動揺した様子は見せなかったが、微かに目が揺れ動いていた。

「……どうしましょう」

エレノア王妃が深刻な様子で考え込む。アーウィン王も同じ様相だ。

「実はな、A」

「はい」

私は傅いたまま返事をする。次に王が放ったのは、あまりにも衝撃的な言葉だった。

「エレノアが、勇者を身籠っているそうなのだ」

「はっ……！？ それは、誠ですか！？」

「国中の聖職者や占星術師に聞いて回りました。みんな口を揃えて、この子は聖なる雷の子と……」

エレノア王妃はお腹を愛しそうに、されどもまるでその子の未来を案じているような辛そうな顔で撫で続ける。

「伝承によると、勇者と魔王は表裏一体。この子が生まれ、そして立派に育つまで我らは勇者を守りきらねばならぬ」
「Aよ。もしもの時は、この子を……イレブンを、頼む」

「母である私からもお願いします。どうか」




「……承知しました」

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