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Aはあっ……という顔をしたが、向かってくる俺を避けるどころかなぜか小走りで迫ってきた。
「なにし……」
「会いたかった！」
え？どういう心境の変化？と戸惑っていると、ニコニコと小走りのAは俺の横をスルリと通り抜ける。
甘い香りがふわりと舞う。
コツコツというヒールの音が近づいたと思ったら遠ざかる。
笑顔が頭に焼きついた。
まさかの展開に固まる俺。
何が起きたんだとゆっくり振り返る。
「遅れてごめんね」
「ううん！会えて嬉しいもん」
「かわいいなぁ。……行こうか」
スーツを着た男と、それに寄り添うA。
笑い合いながら俺が歩いてきた方向へと進む。
だめだ、これは、この後……。
いてもたってもいられなくて、2人を追いかける。
俺がこんなこと、する必要ないのに。
「おい！A」
歩いているだけの2人に追いつくのは簡単で、そのまま手首を捕らえた。
すると、ぎょとして顔で振り返る。
「えっ……」
「……エリカちゃんの知り合い？」
「エ、エリカ…？」
スーツのおじさんはAをエリカと呼ぶ。
一瞬人違いか？と思ったけど、今更間違えるはずがない。
「エリカこの人知らない……」
「え！？」
「いきなりなんなんだ君は……手を離してくれないか」
エリカじゃなくてAだろ！と言いたいところだけど、本名を隠すのにも何か理由があるのかもしれない。
……ていうか、本名を明かさないという時点でこの男との関係性はかなり怪しいはず。
「行こう、エリカちゃん」
「うん……」
おじさんの手によって俺の手はAの手首から離されてしまった。
でも、ここで引いちゃダメだ。
「おじさん！エリカの年齢知ってますよね？」
「……それは」
「ちょ、ちょっと」
焦る2人を無視して言葉を続ける。
「ここで俺に騒がれて警察呼ばれるのとエリカをこっちに渡すの、どっちがいいですか？」
「なっ！」
「いい大人なんだから、わかりますよね」
おじさんが悔しそうな顔をしたその瞬間、Aの手を取って走り出す。
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作者名：あり | 作成日時：2019年3月21日 17時
