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後悔先に立たず。
私は高橋くんの優しさにつけこんだ。
「こんなに悔やむならやらなければよかった」と思うのなんてわかり切っていたことだ。
でも、最中に「かわいい」「好き」「気持ちいい」と言われたとき、心に開いた穴は確かに埋められた。
一時的な幸せで救われるエリカ、それを実感すると惨めになる私、身体以外信じられないエリカ、無償の愛を受けたい私。
この矛盾のかたまりが、私の精神を保っている。
エリカがいなくなったら、私は＿＿。
高橋くんの腕の中で震える身体。
それに気づいたのか、ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。
お互いの体温を共有しているような気分。
こういう温もりが、ずっと欲しかった。
なんでここまでしてくれたのか。
私にはちっともわからない。
ただ、高橋くんはあまりにも純粋すぎた。
私なんかが触れていい存在ではなかった。
私のためを思って何もしなかったのに。
このことが、高橋くんの人生の汚点になったらどうしよう。
私の触れている部分から、高橋くんの白い肌が灰色になってしまう気がして、ちょっと乱暴な動きで腕の中から抜け出す。
すんっと鼻をすすって、涙の跡を消すように顔を擦った。
「明日、始発で家に帰ろうと思ってる。だから先シャワー浴びて寝てて」
「……大丈夫なの」
「うん。変な話、今日のことがあったから頑張れそうだなって」
「おお……ならよかった」
よかった、って屈託のない笑顔を向けられると、また求めてしまいそうで怖くなった。
真正面から顔を見られずに、お風呂場へ向かう高橋くんに背を向けて布団を被った。
高橋くんが戻ると、私もシャワーを浴びる。
やっぱり私にとってシャワーは『現実の音』で、罪悪感を降り注がせた。
ドライヤーで髪を乾かし、適当にスキンケアをしてベッドに戻る。
「あ、おかえり」
「ただいま」
若干眠そうな顔。
布団の中でもぞもぞと動いてスペースをあけてくれた。これは一緒に寝ようということだろうか。
「なんか寂しそうだから」
最後まで優しくて、痛い。
人間は欲深い生き物だと思う。
次から次へと欲しいものが浮かんでくる。
「優しいね」
「まあ、優斗だし？」
「なにそれ」
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朝になったら、きっちり線を引こう。
でも、今は曖昧なままでいることを許してほしい。
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作者名：あり | 作成日時：2019年3月21日 17時
