17 ページ17
.
「混んでるし、部屋はどこでもいい？」と聞いてくるAに、無言で頷くことしかできない。
慣れた手つきでタッチパネルを操作し、シャンプーやらが置いてある棚からお気に入りらしきもの取ってエレベーターに乗り込む。
あぁ、何度も来てるんだな。と何故か勝手に悲しくなった。
上昇を続けるエレベーターは、4階で止まる。
止まった瞬間、嫌に心臓が跳ねた。
Aに着いて行くと、402号室の前で「ここだよ」とちょっと笑った。
躊躇なくドアを開けて部屋に入るから、ちょっと驚く。いや、当たり前なんだけども。
「うわ、すげ……」
初めて見る光景に、思わず声が出る。
部屋の真ん中に置かれた大きなベッド、風呂場へ繋がるドア、部屋の雰囲気に合わせた家具。どれも俺にとっては新鮮だった。
「こういうとこ、はじめてなんだ」
「……まあ」
「ふーん……なんか意外」
どこを見て意外だと思ったのか不思議だ。
謎の緊張で棒立ちの俺とは反対にAは荷物と上着をソファーに置くと、綺麗に整えられたベッドへ豪快に飛び込んだ。
「はぁ〜、落ち着く〜！高橋くんも来なよ」
来なよ…来なよってなんだよ、と思いつつ同じように荷物を置いてベッドに腰掛ける。
確かにふわふわで、ダイブしたくなる気持ちがなんとなくわかる気がした。
「このあとどうする？テレビでも見てお風呂入って寝る？」
「あーまあ、そう、する？」
思いがけず健全な提案に曖昧な返事しか返せないでいると、寝っ転がっていたAがいつのまにか四つん這いでにじり寄ってきた。
「いいんだよ？なにしても」
耳元で囁かれるそれは、何度も使い古されたテクニックなんだろう。
「そういうのはいいから！」
「うわっ」
デコピンを食らわすと、大げさに横に倒れるA。
倒れたときにスカートから見える脚とか、ギリギリで中身を見せないところとか、全部計算済み？
「やっぱり高橋ってわかんない！お風呂！」
ガバッと立ち上がると、さっき取ったものを片手に風呂場へ消えて行った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あり | 作成日時：2019年3月21日 17時
