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「――てことは店員さんて、お姉さんしかいないってことになるん??」

お茶をすすりながら坂田さん(と呼ばれていた赤髪の方)が私に言う。

私は今、四人のお侍さんたちを奥へ案内し、席に座ってもらったところだった。
そしてほかの店員がいないことに気づいた坂田さんが軽くそれについて尋ねてきて、今に至る。

「そういうことになりますね」
「え、じゃあ一人でお店経営しとるんか。偉いなあ」
「っそんな!とんでもないです」

紫髪の方(たしか志麻さんと呼ばれていた気がする)にそう褒められて、私は思わず自分の顔が少し赤くなるのを感じた。

でも、とんでもないです、と言ったのは謙遜でもなんでもない。
たしかに私は一人でこの茶屋を経営している。
でもそれは私ひとりの力で出来るようになったことではない。
お客さんへの関わり方から、注文のとり方、清掃のしかた、ありもあらゆるメニューの作り方に至るまで、教えてくれる人がいたからだ。

……そう。
今はいない、両親が――。


「……顔色優れてないけど、大丈夫っすか?」

その声にはっとした。
気づけば、私の顔色を伺った茶髪さんが、声をかけてくれていたようだった。
慌てて私は顔の前で手を振る。

「だ、大丈夫ですよ!」

しまった、と思った。
いつの間にかまた感傷に浸ってしまっていたらしい。
もう両親が亡くなってから、何年も経っているというのに。
駄目だ駄目だ、気を確かに持て、と心の中で、私は自分の頬を自分の手でぱちんと叩いた。

「…あ、せーや」

と。
今度は、メニューを眺めていたはずの坂田さんがマイペースに口を開く。

「おねーさんて名前、なんて言うん?」
「へっ」
「え、いや。だから名前」

私は少しの間固まってしまった。

――本来ならばそのセリフは、軽薄な男の人そのものの言葉だったと思う。
けれど坂田さんのその表情はあまりにも純粋な笑顔だった。
真っ白で、あまりにも他意を感じない。だからこそ逆に驚く。

「ちょ、坂田?初対面でそれはあまりにもどうかと思うんやけど…??」
「え、そう?だってお姉さん可愛いから、つい」
「つい、じゃねえ!」

センラさんと呼ばれていた(はず)の金髪さんと茶髪さんが、坂田さんにツッコミを入れる。
茶髪さんはもはや坂田さんをしばきそうな勢いだった。

伍→←参


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作者名:黒崎クロエ | 作成日時:2019年1月12日 17時

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