＜FE＞絶望の運命・覚醒編第二巻 (ページ48)

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「逃ゲタ…カ」

人のいなくなったこの空間に、残された屍兵たちの咆哮が轟く。

ギムレーは一つため息をついた。

邪竜の復活を止めるために、人を過去に送る。

ナーガもよくやるものだ。

力が弱っている中そんなことをすれば、ますます消滅の時が早くなるというのに。

まだ本体があちらに残っている。

さぞ、暴れまわっていてくれることだろう。

「ぐわああ！がああああっ！」

「…ダマレ」

泣き続ける屍をトロンで撃ちぬき、黙らせた。

そのおかげで、今度こそギムレーはこの空間に一人になる。

…そういえば、先ほどの戦闘でどれだけのトロンを撃っただろうか。

ここは時空の空間。衝撃を与えれば揺らぐ。

つまり、それぞれが着く時間も場所も異なる。

皆はいったいどこへ飛んだのだろう。

「行クカ」

ギムレーもゆっくりと門をくぐる。

外の世界に引き寄せられるようにして進み、ゆっくりと目を開けた。

そこには…

旅衣装で草原を歩く、Aの姿があった。

「なぜ私が……っ！！？」

Aは驚いたような表情をした後、急に頭を抱えてしゃがみ込んだ。

痛い…痛いと唸りながら、涙目でこちらを見る。

心の奥底で、こちらのAも反応した。

激しく揺れて、次第に落ち着いてゆく。

それと呼応するようにAは倒れこんでゆき、まるで眠るように倒れた。

「フウ…」

同じ世界に同じ存在がいるせいで反応を起こしたらしかった。

こちらの頭には、Aが村を出てここに来るまでの記憶が流れ込んできたから。

…今からAを連れてペレジアに行くのがいいのかもしれない。

邪竜の力が二倍となるのだから。

あちらの世界の比などではなくなる。

そう考えて手を伸ばしたが、

「…！」

人の気配を覚えて、とっさに木の上に転移した。

歩み寄ってきたのは、青髪の青年。癖っ毛の少女。堅物そうな騎士。

間違いない…昔のクロムとリズとフレデリクだ。

あぁ…そうか。

この世界にいれば、もう一度彼らを殺す楽しみがあるのだ。

なら、今は控えておこう。

信頼を得たAでまた、絶望を与えるために。

問題はこれからだ。

さすがに未来の王妃と同じ顔がうろついていれば、騒ぎになる。

一番安全なのは、やはりペレジアだろうか。

この世界ならファウダーはまだ生きているし、その時が来るまでかくまってもらおう。

これから始まる新たな楽しみに、高揚感を覚えながら、ペレジアへの転移を始めた。