ページ52 旅立ちII ページ5
村の皆は別れを惜しむように、村の入り口に集まっている。
クロムとAはすでに馬へと乗り上げた。
見送る前に、女性が話をしだす。
「王妃様かぁ…。本当にすごい人になっちゃったね、Aはさ」
「玉の輿なんて…憧れるよ〜」
「えへへ…」
クロムの体に手を回しながら、Aはほんのり頬を染め、照れ笑いをする。
恥ずかしいのか、クロムは振り返らないままだ。
「じゃあ…クロムさん、Aを幸せにしてあげてよね。それが村の皆の願いだから」
「…もちろんだ」
女性がかけた声に、クロムは背中だけで答えた。きっと真剣な顔をしているんだろう。
見えないけれど、きっとそうだ。
まったく…クロムらしい。
「今日は、ありがとうございました。とても楽しかったです!」
「Aこそ、帰ってきてくれてありがとう」
「また来いよな!…今度は子供も連れてさ」
「こ、子供っ!?」
青年の一言に、Aはひどく動揺する。
それはクロムも同じで、一瞬上体がぐらつき、危うく転げ落ちそうになった。
子供を連れてくるってことは、つまりそういうことで…。そのためには…。
「…!!」
「あらら〜?顔が真っ赤よ?」
「も、もう!よしてくださいっ」
本気で叫んだAに、女性たちもごめんごめんと手を上げながら謝った。
でもやはり反応が面白いのか、やめられない。
「でもさ…数年後には、ね?」
「……………が、頑張ります」
おおっと声が上がると同時に、クロムにお願いして馬を走らせてもらう。
さようなら!
最後にそう告げて、逃げるようにその場から走り去った。
また…会いに行こうと、思いながら。
「あの、クロムさん…怒ってませんか?」
「なぜだ?」
「い、いえ…変なこと言っちゃいましたし…」
自分で言い出したというのに耐えきれなくなって、クロムの背中に顔を埋める。
さっき。そう言われて気がついたのだろう。
その背中がはねた。
「いや、あれは…。その、だな…」
「………」
「気にしなくて、いいぞ」
「…はい…」
機械仕掛けのような話し方が、緊張感をひしひしと伝えてくる。
恥ずかしいのは、お互い様だ。
だからお互いに尊重しあえる。
この人と一緒になれて、よかったな。
母さん、見てくれていますか。
私は今…とても幸せに過ごせています。
あなたのおかげで、ここまで来れました。
これからもずっと…見ていてくださいね。
村の上空を眺め、そう祈った。
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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時