＜FE＞絶望の運命・覚醒編第二巻 (ページ40)

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ページ87 苦肉の策ページ40

「黒炎が…！！嘘、どうしよう！？」

「もうあなたたちに希望の未来はない…。私が絶望へ導いて差し上げますよ」

ギムレーは高らかに笑う。

久しぶりに与える絶望。人の絶望の表情。

楽しくて仕方ない。笑いが止まらない。

「……。皆さん、聞いてください」

ギムレーに聞こえないように小声でルキナが皆に語りかける。

ようやく立ち上がったジェロームやロランも、仲間に介抱してもらいながら耳を傾けた。

「このままでは…私たちは全滅です。だから…急いで虹の降る山に行きましょう」

「虹の…ってルキナ、あんたまさか…」

勘の良い仲間は、その意味に気づく。

虹の降る山。そこでは代々の聖王が儀式を行う。

次の代に聖王を受け継ぐ儀式のために…山の中腹で『相続の儀』をするのだ。

しかし、ギムレーに対抗するには初代聖王が行った『覚醒の儀』をしなければならない。

台座とともにある宝剣ファルシオンに、聖なる光の力を宿す儀式。

「でも…大丈夫なの…？黒炎は…」

「…わかりません。でもやるしか…！」

覚醒の儀。それは神竜ナーガの子となる儀。

その竜の与える炎に耐えきることで、儀式は初めて成功する。

しかし、まともに受ければ人は危ない。

その受け皿の手伝いとなるのが台座と宝玉なのだ。

それが一つでも欠ければどうなるかはわからない。

ずっと昔の初代聖王しか、その儀を受けたことがなかったのだから。

最悪の場合…待つのは、死。

それをルキナはやろうというのだ。

「そんなの…危険よ。やらせたくない…！」

「しかしこのままでは…！」

「…わかった。そこへ行こう」

ジェロームがそう言った。

周りは動揺して、彼を見る。

「ジェローム！」

「このまま死ぬよりはマシだろう。それより、あの女をどうするんだ」

「あ…」

笑い続けるギムレーを見て、皆は黙り込んだ。

先の四人は彼女の強さを痛いほど理解している。

後の皆も竜の本体を見れば、勝ち目がないことくらいわかるだろう。

目的地は、ここからそう遠くはない。

しかし、ギムレーの目を欺けるわけもない。

「…ロラン。あなたの力で皆をとばせますか？」

「目的地は山の頂上…でしたよね。…この大人数、山の麓までが限界でしょう」

「…充分です。ありがとうございます」

そこまで行けば、なんとかなる。

一刻も早く儀を行わなければ危ない。

それに、竜の力を得たという母の言葉。

ナーガの力で、何かがわかるかもしれないから。