ページ86 逆転 ページ39
ぶつかり合う剣の音に混じる声。種類からして、かなり多数なようだ。
「帰ってきた…！…きゃっ！」
セレナが急に目を逸らしたので、隙をついて腹を蹴り後ろへ飛ばした。
ルキナがセレナを抱きとめる。
そのルキナの目も、声のした方に向けられた。
仲間が帰ってきたのか。
「ルキナーッ！宝玉もってき…ええっ！？」
「ゴホッ…シンシア。あんたうるさいわよ」
あの時に見た、ペガサスを操る少女がルキナたちのもとへいち早く駆けつけた。
「なんでロランたち倒れてるの？大丈夫！？」
「ええ…なんとか」
「ちょっと待って回復は…ブレディーッ！」
「だからうるさい…！」
シンシアに続いて続々と集まってくる仲間。
その兵種も得物もバラバラで、かなり多彩な部隊となっている。
「おいルキナ。漆黒の闇より帰還せし我らより貴殿に通達がある」
ふいに、変な話し方をする少年に目が止まった。
薄い金の髪。あの子と同じ…。
「お前から任された黒炎だが…見つからなかった」
「！…それは…」
「…これのことですか」
今まで黙っていたが、ついに口を開く。
皆もようやくギムレーに気がついたようだ。
ローブのポケットに入れてあった黒炎を、彼らの前に出して見せる。
ルキナとセレナ以外、皆が驚きの反応をした。
「…！貴様…まさか！」
「その前に質問があります。あなた…名は？」
「ふっ…我は定められし宿命を持つもの…。漆黒の彼方より舞い降りた戦士…ウードだ！」
「ウードさんですね、わかりました」
「え、あの…他のはスルーですか？」
文字通り変な言葉は無視して、名前と顔だけを頭に入れた。
ウード。記憶に間違いがなければそれは…
リズの子供の名だ。
それじゃあ…あの約束を叶えなければ、ね？
「貴様…こちらからも質問がある」
「ウード…？」
「貴様はあの人によく似ている…。俺が誇る人の友で、頭の切れる参謀…。このルキナの…」
「ええ、母ですよ」
さらりと答えられたことに、拍子抜けしたのかウードはあんぐりと口を開けた。
「ルキナの母にして、聖王クロムの右腕。そして今は…選ばれし者です」
ウードに似せた話し方で言った。
「ルキナ…この人数差で逆転したと思っているようですが、見当違いですよ」
「え？」
「竜の力を得た私には誰も敵わない…それに」
手にした黒炎を高く放り上げ、本体の口がそれを噛み砕く。
「黒炎はもう…存在しませんから」
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作者名：すぃふる | 作成日時：2016年7月9日 15時
