ページ81 子 ページ34
ルキナはただ、呆然と立ち尽くす。
あの日、父の仲間が持ち帰ってくれた愛剣であり、イーリスの宝剣ファルシオン。
そこから滴り落ちる赤の雫は、正真正銘の血だ。
あの体は、母の…人間の体に間違いない。
そうなら、あの禍々しい気配はなんだというのだろう。覗いていた竜の気配?
なぜそんなものが母から…。
そして一番不可解なのが、母の姿。
あれは15年前のこの肖像画と一切変わっていない。
人として、そんなことがあり得るだろうか。
母は優しい人だ。戦争の中でも、皆の心を明るく照らし続けた人だと聞く。
そんな人が実の娘に嘘でも刃は向けたりしない。
…おかしい。
あれは、母だけどお母様ではないんだ。
だから自身も刃で母の体を切り裂いた。
違う。あれはお母様じゃない。
そう分かっているのに…手が震える。
足が震える。涙が出る。
ずっと…会いたかった…。
「お…かあ…さま…っ…」
待ち望んだ気持ちがあまりに大きすぎた。
ギムレーの体は、またもや竜の上へと移る。
すぐそばでは勇気のある城の兵が、頼りない槍でギムレー本体の体を攻撃している。
無論、そんなものは痛くもかゆくもない。
硬い鱗に阻まれ、槍の方が壊れかけていた。
「…ばかですね」
「…ぎゃあ!?」
ブレスを吹きかけてやれば、あっという間にその兵は粉々になった。
邪竜のブレスは、生命吸収のブレス。
聖竜たちのような炎ではなく、禍々しい紫の棘で体のエネルギーを吸い取る。
兵の体からは全てのエネルギーが奪い取られ、黒く染まっていた。
さて。雑魚どもの相手は済んだ。
あとは、ルキナがどう動くかだ。
母への感情を押し殺して攻撃を仕掛けたのは見事。
しかし今ごろは泣いているだろう。
この15年間。そして封印された長い間、たくさんの人間を見てきた。
そのおかげで次の行動がよくわかる。
彼女は立ち直り、きっと母を倒しにくるだろう。
真実を知るために。
それなら、こちらから教えにいってやる。
この城に来た本当の目的は、ルキナを殺してあげることなのだから。
あちらも本気で来てもらわねばいけない。
さぁ…来い。ルキナ。その仲間たち。
お前たちを倒し、イーリスを滅ぼすことで初めて竜の復讐は成し遂げられる。
もう誰にも邪魔はさせない。
はやく…ハやく…ハヤク…。
モット…絶望ヲ…血ヲ、命ヲ。
(…ルキナ。どうか…)
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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時