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ページ80 母 ページ33

ルキナが見上げるその絵は、どこの王家にもよくある王族の肖像画だった。

そこに描かれているのは、まだ幼いルキナと生きていた頃のクロム。

そして…Aの姿。

おかしい。これは確かに自分の母だ。

顔もしっかり覚えている。

あの琥珀色の瞳。美しい髪。笑顔。

クロムの姿と共に、幼かったルキナの目にはしっかりと焼き付いている。



じゃあ…なぜ、行方知れずとなった母が、今。

この絵と変わらぬ姿で。笑みを浮かべて。

自分に向かって剣を振り上げているのだろう。


「…っ!」


ほぼ気配だけでギムレーの行動を悟り、ルキナは剣で受け止めて攻撃を流す。


「あら…クロムさんそっくりですね。さすがです、ルキナ」

「あ、あなたは…」

「どうしました?」

「本当に…私のお母様なのですか?」

「ふふっ。おかしなことを言いますね。私はA…あなたの母です」

「ではどうして攻撃など…!」


震える手で剣を構えて、ルキナは問う。

15年の時を経ても変わらぬ母の姿や、そこから発せられる異様な気配。

そのことに震えが止まらなかった。


「少し悪戯したくなってしまって…ごめんなさい。久しぶりで嬉しかったものですから…」

「…あ…」


震えは、その微笑みによってかき消された。

懐かしい母の笑み。

包み込んでくれる、母の笑み。

大好きな母となに一つ変わらない。

やっと…会えたんだ。


「お母様…」

「えぇ…ルキナ」


支えてくれる仲間はいても、心からの愛情を注いでくれる者はいない。

長い間こんな戦火の中で親の温かみを知らずに生きた子は…すぐに落ちる。

剣を下げたルキナに、ギムレーは優しく抱きつく。


「長い間一人にしてごめんなさい…私も、ずっと会いたかったんですよ…」

「…お母様…」


ルキナの腕がピクリと跳ねる。

彼女の腕が、徐々に上へと上がってゆく。





「…すみません」





だが、それは抱きしめるためではなかった。

緩めた手に力を入れて、剣を強く握りしめる。

そして、そのまま横へと振った。

突然のことで完全に避けられなかったギムレーは、腹に少々傷を負う。


「やっぱり…違うんです。あなたは若すぎる…!」

「……」

「でも私の母であることは間違いありません。どうして…」

「…あらあら。賢い子ですね」


ギムレーは腹に手を当てて、魔力を送る。

すると傷口が、ライブを受けた時のように塞がる。

そしてまた優しげな笑みを浮かべて、その場から姿を消した。

ページ81 子→←ページ79 聖王


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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時

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