ページ51 小さな祝宴 ページ4
それは本当に、小さな祝宴だった。
出されたのは、ペレジアの料理の中の郷土料理。
クロムはやはり慣れない様子だったが、それでも美味しそうにしていた。
Aの頬も、懐かしい味に自然と緩む。
暖かい料理と、人々の心。
それだけで十分に幸せだった。
「ところで、Aはイーリスに行ったのよね〜?どんなところなの?」
「緑豊かで、とても過ごしやすいところですよ。国民たちも、皆さんのように良い人です」
「へぇ…!いいわね。あ、じゃあ…お二人さんの出会いは?」
お酒に酔っているのか、少し顔を赤くして女性は話しかけてくる。
ニヤニヤとしたからかいの表情。
本来なら面白い話だろうが、二人は違う。
Aとクロムは困ったように互いを見つめ合うが、ここで嘘を言っても上手くいかない気がする。
しかし、敵国の王だと知ったら…。
「…クロムさん」
Aは芯の通った視線を向ける。
覚悟はできている。一度イーリスでやってのけたことではないか。
今更、不安がる必要などない。
クロムもまっすぐな瞳で言葉を返す。
「実はですね…」
この二人に、怖いものなんてない。
そして。
「…イーリスの王と、王妃…?」
予想どおり、その場には沈黙が訪れる。
赤みがかっていた皆の顔も、すっかり引いている。
どうしよう。
もしペレジアの兵に連絡でもされたら、危険だ。
でも、皆がそんなことするはずない。
二つの意見がこころでぶつかり合い、悲鳴を溢す。
「やっぱり…驚きますよね」
「…そりゃあそうだよ。王妃なんて、そんな…」
完全にアウトだ。
逃走の経路を頭で軽く考える。
しかし、その予想は覆された。
「……最っ高じゃない!!」
「そうですよね…敵国なんて…ええっ?」
間の抜けた声が出る。
クロムも拍子抜けしたかのように、その女性を凝視していた。
「ど、どうして…私はペレジアに戦を…」
「もちろん、怖かったわよ。軍隊が村のすぐ側を通ったんですもの。でもね」
代わりに別の男性の声がする。
「俺らはもともと国が嫌いだった。小さな村だとひでぇ扱いしやがって…。だから別にいいんだよ」
「それどころか、イーリスに感謝してるくらい」
にこやかな皆の笑顔。完敗だ。
完全に策の上をいかれた。
こんな小さな村に住む人たちには、こんなにも広い心が宿っているんだ。
「ありがとう…」
自分はこれまでに何度感謝しただろう。
改めて仲間の温かみを感じられた日だった。
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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時