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ページ75 銀のリング ページ28

ギムレーが向かったのは、国境の村。

リズたちに殺してくれと嘘の言葉を言いすぐに進軍するように仕向けた。

しかし、あの惨状では少なくとも半月程度は準備にかかるだろう。

楽しいとはいえやり過ぎたか。

ならばその半月の間に、さらに絶望を与えることができることを考える。

例えば…進軍の行路に……屍を並べるとか。


「え…?うそ、A!?」

「……」

「よかった、来てくれたのね!助かったわ…そうそうあの日渡し忘れて…」

「…お久しぶりですね、それで何をですか?」

「こっちよ!待って…みんなを呼んでくるから」


Aの声に切り替えて話せば、簡単に信じ込む。

本当に馬鹿な種族だ…人間というのは。

女に手を引かれて村の奥へ進む。

ちょうど村の真ん中にある家。

そこにはわらわらと人間が集まっている。



これは都合がいい。

こんな村全体に攻撃が届く絶好の位置に、わざわざ殺されに集まるなんて。



「そういえば、今日は一人なの?あの青髪の男の人も一緒かと思ったわ」

「クロムさんは…仕事で」

「あら、そうだったの?残念ね」


そう言いながら女は人ごみをかき分け、家の戸に手をかける。


「ここにいてね、A。今とってくるわ」


女は家へと入って行き、何やらごそごそと音を立て始めた。

何をしているのか少し気になって覗き込もうとするが、男に止められる。


「俺ら全員からのプレゼントだからさ、まぁ渡されるまでのお楽しみだ」

「そうですか…ふふ。なら…」

「…?」

「先にこちらで楽しみましょう?」


何を想像したのか、顔を赤くする男。

…手始めに、本当の赤に染めてやった。

周りからは小さな悲鳴が上がる。

女は泣き崩れ、男は跳びのき、老人は子供を守る。

そして皆同じ顔をした。



…そう、その顔だ。

絶望に満ちた顔。甘美な顔…。



「ははっ…アハハハッ!」


家の中に声が届かぬように小さく笑い、泣き声をあげる者を殺していく。

皆わけがわからないといった様子だった。

ああ…この器にして正解だったな。

やがてあたりが一面赤色になった頃に、女はのこのこと戻ってきた。


「A、あったわよ〜……きゃっ!!?」


女は足元の惨状に驚いて、持ってきた者を落とす。

驚きと恐怖に引きつる喉を、次の言葉を発する暇も与えず、裂いた。

転がった銀色のモノに、赤がこびりつく。



小さな模様の掘られたその銀のリングを、ギムレーは見下ろし、踏みつけた。

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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時

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