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ページ67 潜むモノ ページ20

「きゃあああ!!」

「うわあああっ!!」


次々と上がる断末魔。

その度に誰かの絶望の声がする。


「ヴェイク!スミアさんっ!ソワレさん…!!」


散ってゆく仲間を見つめて、リズは絶望のあまり崩れ落ちる。


「なんで…ひどいよ…こんなことって…!!皆…お願い…目を覚ましてよおっ!!」


喉が掠れるまで叫び続ける。

しかし…どんなに縋って懇願したって、どんなに泣き叫んだって願いは叶わない。

希望などもう…存在しないのだから。


「リズ様!早くこちらに!!」

「…フレ…デリク…」

「リズ!急いで!!」

「ソール…」


二人が馬上から手を伸ばして、リズを催促する。

逃がすものか…まだ絶望を最大限に引きだせていない。もっと苦しみを与えるまで逃しはしない。

二人に向けて棘を伸ばしたが、剣に弾かれる。

さすがは王家直属の騎士と、クロムの右肩といわれた騎士…。侮れないな。


「さぁ…急いで!」


なら、馬を狙えばいい。

もう一度棘を伸ばした。

今度は悟られないように、足元から素早く。

フレデリクにはバレてしまったようで、寸前で避けられた。

しかしもう一人は…。


「ソールさん!!」

「え…うわあっ!!」


体のバランスを崩させ、ソールを床に叩きつける。

腹を強く打っている。これでしばらくは動けまい。

その隙をついて、フレデリクはリズを無理やり引き上げた。

ソールが咳き込みながら叫ぶ。


「早く…行ってっ…!!」

「ソール!!」

「イーリスを…頼んだ…よ…」


リズは懸命に手を伸ばすが、フレデリクは苦渋の滲む顔で手綱を引いた。

そのまま加速してどんどん離れていく。

…これじゃあ、届かない。

他の皆も撤退してしまったようだ。

全員仕留める予定だったのにな。


「うっ…ごほっ…A…」

「………」

「君は…Aなの…?」

「…我はギムレー。Aはいない」


突き放すように言い放つと、ソールはそっか…と目を細めた。


「もう…覚えて…ないん…だね。初めて…イーリスに来た時の…ことも、あの日…楽しかった…宴のこと…も…」


何を言うのだ。

そう思ったのに、直後。胸の奥で何かが疼いた。

頭が痛い。こんな痛み…感じたことがない。


「でも…僕は…忘れない…から。だから…今まで…ありがとう、A…」


もう聞きたくなくて、彼に棘を突き立てた。

ソールは息を止める。


ありがとう


だなんて…なんだ、これは…。

胸の奥にいるのは…何?

ページ68 対話→←ページ66 甘美な顔


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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時

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