検索窓
今日:29 hit、昨日:0 hit、合計:16,779 hit

ページ66 甘美な顔 ページ19

「お兄ちゃん…?や…いやあああっ!!!」

「……ククッ」


リズの泣き叫ぶような悲鳴に、ギムレーは声を抑えて笑う。

これでもかという量の涙を流し、兄の亡骸にすがりついて叫び続ける。

回復をしていた者たちも嗚咽を漏らし、普段は泣かなかったような人たちも瞳を濡らす。

こんなに面白いことはない…。


「私は…軍師失格…ですね。愛する人も…守れないなんて。ごめんなさい…ごめんなさいっ」

「Aさん…顔を上げてください…。あなたは悪くないんです。私たちこそもっと強かったら…」

「スミアさん…」


スミアもすでに目を赤く腫らし、Aを慰める。

感傷に浸るこの雰囲気。

誰一人としてギムレーだと気づく者はいない。

ならば…。


「リズさん…」

「…Aさ…んっ…ううっ…」

「私の力不足で…ごめんなさい」


回復が終わり、立ち上がれるようになった。

リズの元へゆき、そっと抱きしめる。


「…大丈夫っ…Aさんの方がっ…辛いもん…」


辛い…辛いのか。

確かに、姉を失い…兄を失い…一人取り残された少女の哀しみはとても大きいのだろう。

仲間だった者としてのせめての慈悲だ。



兄と同じように…死なせてやる。




「…!!リズっ!!」

「え…?」


腕にしっかりとした感触が伝わる。

肉を貫くあの感覚。

しかし、少女は無傷。

失敗したと理解し、舌を打った。

リズを庇い目の前に倒れこんだのは…


「嘘…でしょ……ねぇ、マリアベルッ!!」

「無事…ですわ、ね…。安心…しまし…」

「マリアベルッ!マリアベルーーーッ!!!」


宴会で心を開いてくれた、リズの親友。

綺麗に巻かれた髪を赤く染めている。


「…綺麗…ふふっ」

「Aさん…そんな…どうして!!」


皆がありえない…と目を瞬かせる。


「どうしてってそんなの……。私ガAジャないカラ二決マッテルじゃないデスカ…」

「きゃあああっ!!」


あくまでもAの声で答え、魔導書を投げ捨てた。

奴らはやっと知ったのだ…Aがもういないことを。なら…それを使う意味はない。

直々に竜の力で戦ってやろう。



力を解放する。

体から紫の霧が溢れ出して、身を包む。

腕を上げて命令すれば、それはすぐに現れた。



地面から勢いよく飛び出し、逃げまどう皆の急所を的確に貫く棘。

自分の思いのままに動く。

皆はまだAを捨てきれなくて攻撃はしてこない。

一方的な殲滅だ。





地獄の時が…幕を開ける。

ページ67 潜むモノ→←ページ65 邪竜ギムレー


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

ラッキーナンバー

8

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした!


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。