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ページ65 邪竜ギムレー ページ18

「ハハ…ふ、アーハハハッ!!」


息をしなくなったクロムの前で、Aは高らかな声をあげる。

笑っているのに…瞳から涙を零した。


「ギムレー様…よくぞ戻られました」

「…オ前ハ?」

「あなたの忠実なる僕…ファウダーでございます」


ファウダーが敬意を表して跪く。

A…覚醒したギムレーはそれを、感情のない目で見下ろした。

そのまま沈黙が流れるが、それはすぐファウダーの声によって遮られる。


「…!ギムレー様…ゴミどもが集まったようです」


彼の視線の先には、障壁沿いに集まるクロムの仲間たちの姿。

戦いを終えたのだろう、皆ボロボロの姿で心配そうにこちらを眺めていた。


「魔術で我らの姿は隠れております故、どうぞ皆殺しになさってください」

「…マテ」

「はい…?」

「コノ器…軍師ダッタナ。…面白イ」


ギムレーは祭壇の方へと足を進めた。

ちょうど戦いが行われた場所に立つ。


「…アノ壁ヲ破壊シ、…オ前ノ魔術で我ヲ撃テ」

「ギムレー様をっ!?」

「…ソウダ。早クシロ、僕ダロウ?」

「…はっ…」


ファウダーはそれに従い、障壁を破壊した。

外の空気と音声が流れ込む。

続いて間を入れずに、ファウダーの攻撃を受けた。

これは、戦ったように見せるためだ。

さらに…


「ギムレー様…?なに、を…」

「オ前モコレニ必要ダ」


大激闘の末、敵将を討ち取ったように見せるため、ファウダーも殺しておく。

A本人が使っていた魔導書を使って。

この作戦も、全て器であるこの体の知識を借りて考えた。

軍師とは…使える器だ。


「…コレデイイ」


ギムレーは土煙舞う中をフラフラと歩き、わざと人の目に止まるところで倒れこむ。

当然、心配した仲間たちが跳ぶように集まってきた。回復の杖を用意する。


「Aさんっ…返事して!Aさん!!」

「…リズ…さん…?」

「よかった…!待ってて。すぐ回復を…」


弱々しいAの声で、演技をする。

リズは本気で信じ込んだように心配をしている。…あまりに愉快だ。


「…リズさ…私…ごめんなさい…!」

「どうしたの?」

「あなたの…大事な、人…守れなかっ…」

「大事な人…?まさか!」


治療で手が離せないリズに代わり、意味を悟ったフレデリクが辺りを散策する。


「!!…クロム様!!」

「…フレデリク!?なに、どうなってるの…!?」


クロムの亡骸を見つけたら、この少女はどんな苦しみの表情をするだろうか。

とても…楽しみだ。

ページ66 甘美な顔→←ページ64 覚醒の時


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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時

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