ページ64 覚醒の時 ページ17
当然、彼女は焼け焦げるはずだった。
しかし、彼女はなんともないといった様子で、呪縛から解き放たれて、その場に立った。
怪我をするだろうに、むしろ彼女の体は綺麗になっていた。
溶かされたローブは元に戻り、髪は戦闘前のツヤのある髪。
爆発の際の怪我も、まるで何もなかったかのように消え去っていた。
「…ふふっ…ハハハハ!」
「A…?」
突然笑い出したA。
この数年間見せてくれた明るい笑顔と全然違う、笑い狂うようなその笑い声。
…きっと…ファウダーの策が上手くいかなかったことが可笑しいのだ。
だから、嘲笑っているんだ。
Aらしくないが、そうに違いない。
「A、大丈夫か?さぁ…剣だ。もう一度立て直しだ、行こう!」
「……」
Aは虚ろな瞳でこちらへ歩み寄り、手を伸ばして剣を受け取る。
そして、それをまた投げ捨てた。
思わず剣を追ってしまった視線を戻すと、目の前には彼女の顔。
息がかかるほど近い。
こちらの息が止まりそうだった。
…久しぶりに彼女の顔を見た気がする。
…こんなにも、美しかっただろうか。
琥珀色をした、吸い込まれるような澄んだ瞳。
粉雪のような柔らかく白い肌。
対照的に際立つ、紅い唇。
これが…A?
無意識に、彼女の頬に手が伸びた。
彼女が、くすぐったそうに笑う。
その笑みは、正真正銘のAの笑みで。
戦闘中だということを、ファウダーのことを忘れるほど、夢中になった。
これが…自分の想い人。愛する人。
Aの体を包み込むようにして抱きしめた。
彼女も身を預けるように力を抜いた。
あぁ…戦いの最中に感じる温もりは、なぜこうも暖かいのだろう。
その余韻に浸っていたせいで、腹部の異変に気付くのが遅すぎた。
気づいた途端に視界が揺らぎ、床の色がすべてを占める。その中に、赤いものが混じった。
…鉄の匂い。…血。
Aを探し求めて…視線を彷徨わせる。
彼女はすぐに見つかった。
こちらを見下ろして、優しく微笑む。
その手には、赤く染まる雷の槍。
彼女に刺された。
そう理解するのにとても長い時間がかかった。
なぜ…?そんな言葉すらも出ない。
視界の端で、見慣れた髪が揺れた気がした。
リズ…もう、会えないのか?
「…か…は…」
「愛しい…愛しいクロムさん…。これからずっと…永遠に…さようなら」
最後に彼女の手が触れる。
Aの壊れた笑い声を聞きながら、意識が薄れていくのを感じた。
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作者名:すぃふる | 作成日時:2016年7月9日 15時