部屋に足りないもの ページ27
グクが来ないうちに季節はすっかり秋を迎えようとしていて、頬を撫でる風に小さく震えることも増えてきた。
グクは、本当に妖精だったのだろうか。
あのぬくもりもあの優しさも、時折感じた力強さも。全て実感として触れてきたはずなのに。
悲しいや怒りや不安などの激しい感情は湧いてこなくて、ただぽっかりと心に穴が空いたような、虚無感だけが襲いかかってくる。
「A、なんか最近元気ないけど」
「……それ、生徒にバレてるかな？」
「や、俺からしたら空元気に見えるけど、生徒は相変わらずお前のこと大好きだよ」
「そっか、ならいいや」
教材が並ぶ棚の前で、次の生徒の教材を探す。前よりもずっとシフトを入れるようになって、テヒョンと顔を合わせることも増えた。
お互い、前と関係はさほど変わらないでいた。
「どうしたの」
「……んー、」
「何、言えって」
「うさぎくん、来なくなっちゃった」
はは、と笑って見せると、ぽすりと教材で軽く頭に触れられた。
ああもう、次の授業があるのに、泣きそうになってきた。
「泣くなよ」
「ん、」
「泣いたら俺が1対4の授業しなきゃいけなくなる」
「ねえそっちなの」
テヒョンの通常運転で心が緩んで、そんな私を見て「うん」とテヒョンもいつも通りの幼い笑顔を浮かべた。
グク、一体どこにいるの。
毎日グクのことばかり考えてるのに。ご飯はちゃんと食べてるかな、辛い思いしてないかな、……鍵はまだ持ってるかな、
私が使うことができない不味い歯磨き粉も、甘すぎて食べられないグクの好きなバナナキックも、他にも全部、私たちのあの時間を象徴するものは家にたくさん残っている。
それなのに、グク、あなただけがいない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1507人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うに - めっちゃ好きです…このお話に出会えてよかった（ ; ; ） (2022年10月14日 19時) (
レス) @page44 id: 7083a913c1 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 狐兄弟 凌さん» 本当ジョングクの黒髪is正義ですよね……何色でも神ですけど……（） 私も一応グクより年下やんですが、どうしてもヌナと呼ばれたくて笑 コメントありがとうございます！ (2019年11月1日 20時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
狐兄弟 凌 - 確かに黒髪好きですかっこいい！！ あの困り顔で首傾げられると死にます可愛すぎて この話も私は中学生だけどヌナ目線で面白かったです！それにグクオッパ呼び嫌いやしー泣 (2019年11月1日 20時) (レス) id: 7d3711d128 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - kokoboboさん» 弟の方まで（ ; ; ）！ ありがとうございます！ ジョングク氏は人見知りな分心を許したらどっぷりだろうなと思っていて、それが自然と滲み出ているんだと思います（）書くのが楽しかったので、きっとまた何かしら書くと思いますのでよろしくお願いします！ (2019年10月20日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
kokobobo(プロフ) - 前回の弟レンタルの話もとても自分の好みで、今回の作品も本当に自分の好み刺さってて神かと思いました！ドロ甘系大好きなのでこれからも機会があったら描いていただきたいです応援してます！ (2019年10月20日 14時) (レス) id: 4b3068ef63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちよ
| 作成日時：2019年8月25日 20時
