弟レンタルしました。【JK】

一波乱 ページ8

JM


火照った顔で、とろんとした瞳で、細腕をその男に伸ばした。

ヨヌ、は、彼女が亡くした弟の名前だ。知らない人を酔っ払って間違えているのだと思って、彼女の手を慌てて引かせようとした時、その男の子がAの手を取った。


まさか、可愛らしい顔をしてこのまま持ち帰ろうだなんて思ってないだろうな。


「ヨヌ？」
「おいグガ、まさかこの人、」
「……ヌナ？ ……どうしたの？ 今日たくさんお酒飲んだの？」


隣にいたえらく整った顔の美形の青年も目を丸くしている。


グガと呼ばれた少年は、さも当然というようにAをヌナと呼び、表情を綻ばせた。

ホビヒョンも状況が飲み込めていなくて、彼もヨヌのことを知っているから、頭にはてなマークを浮かべまくっている。

なんなんだ、この状況。


「うん。仕事ひと段落したの。だから、飲んじゃった」
「ヌナ一人で帰れる？」
「ヨヌも一緒の家でしょ」
「……ヌナはもう社会人だから一人暮らしじゃん」
「あれ、そうだっけ」
「そうだよ」


その会話は間違いなく姉弟のそれで。穏やかな会話なのにどこか異様で、不思議な雰囲気だった。

くぅ、とついに眠ってしまったAを見て数秒。少年が僕を見た。

「……すみません、お邪魔してしまって」
「いや、逆にうちのがすみません」
「いえ」

それじゃあ、と頭を下げられ、彼らは今入ってきたばかりなのに店を出ようとした。

Aのことはヒョンに任せて、二人組を追う。なんとなく、だけど。勘、だけど。


あれはたぶん、Aのレンタル弟だ。

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