海と夢と手のひら ページ19
まだ海に来るには早い季節だが、見る分にはとても楽しい。人もいないし、ちょうどよかったかもしれない。
「ヌナ! 写真撮りましょう!」
グクからそう言ってくれて、もちろんだと何枚も写真を撮った。
風が強くて髪の毛のせいで顔が写っていなかったり、太陽の眩しさに目を瞑ったりして変な写真も少なくなかった。
太陽の光を浴びて海がキラキラと光る。寄っては返す波で、子供みたいに遊びながら何度も私の方を見るグクを見て、これを幸せと呼ぶんだろうなと頬が緩んだ。
ああ、なんて美しくて儚い虚偽の世界なのだろう
「ヌナもこっちきて! 靴脱いで、ほら!」
手が伸びる。
その手を握っていいのか、と一瞬ためらったが、全ては「最後」のせいにしてしまおうと、あの泣いてしまった日以来はじめて手を握った。
やはり、彼の手のひらはあたたかい。
夢の中にいるみたいだ。長く焦がれた幸福の夢。
どうか覚めないで、覚まさないで。
そう願ったとしても、このさざ波の音はいつか思い出のとして今よりずっと遠い場所から聞こえるものになる。
「きゃっ、冷た、わ、またきた!」
「楽しいでしょ?」
「ふふ、うん、楽しい!」
夢と現実の境界線が曖昧になって、透明になっていく。
この世界を信じてはいけないのに、現実だと思い込んでしまいそうだった。私は自分でこの世界を捨てると決意したのに。
ぐっと、手が強く握られた。
この手を離したくないのに、離さなくてはいけない。
でないと私は、グクを離してやれなくなる。
今はまだそこまできていなくても、今にそうなることがわかるから。でも、それでも、
この瞬間だけは、彼の手を握ることを許して。
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ちよ(プロフ) - ゆりかごさん» 更新や新作頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします……!ありがとうございます! (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - nyarさん» 幸せを感じていただけたら嬉しいです! グクとの海のデートはソロの日本語訳を参照にしながら執筆いたしました! 多幸感もテーマの一つです( ˘ω˘ ) (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 兎餅さん» 泣!?!? ありがとうございます! お返事遅れてしまって申し訳ないです! ありがとうございます! (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆりかご - もうすごく感動しました( ´;゚;∀;゚;)これからも応援するので頑張ってくださいo(*≧∀≦)ノ (2019年7月29日 14時) (レス) id: 49ff43ec91 (このIDを非表示/違反報告)
nyar(プロフ) - はじめまして!かなりハマったしかなりときめきました!最後から3ページくらいからもう幸せすぎてヤバかったwこんな素敵なお話、ありがとうございます!あなたの他の作品も今から見に行きます^_^ (2019年5月22日 23時) (レス) id: 5ee86f0a2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年4月28日 16時