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虚偽の空間 ページ11

額に汗をかいたグクは、本当に申し訳なさそうな顔をしていて。

変わった様子は何も見られなくて、いつのまにか震えていた手が落ち着いていくのを感じた。


「ヌナ、ごめん。電車が止まっちゃって、携帯も出せないくらい人が多くて……ヌナ?」


グクの声を聞いて、ぼろっと涙が溢れ出してしまった。

家族が事故に遭った時は、私を迎えに来る時で。待っても待っても来ないから不思議に思っていたら、警察から電話がかかってきたのだ。

抱きつきたくなった衝動を抑え、グクの手を少しだけ握った。
これくらいの接触は許されたい。

「よかった、グクに何かあったのかと思って、っ、ごめ、」

早く泣き止まなきゃ、と思っていると、グクの手がピクリと動いて。ハッとして慌てて手を離そうとしたら、逆にぐっと握られた。

手のひらから伝わる温もりが、じんわりと心を満たしているく。


「大丈夫だよ、ヌナ。僕はちゃんといるから」


丸い目の目尻が下がる。
重ねている、わけじゃないけれど。

それでも確かに、彼は私さえ気づいていなかった私の心の隙間に優しく浸透していく。


「今日ね、今から雨降るんだって」
「うん」
「だからボーリングに行こう」
「うん。僕、ヌナと一緒ならどこだって楽しいよ」


この優しさも、温もりも、癒しの時間も。

全てが契約で成り立っていて、全部が全部ではないと思いたいけれど、これは偽りの空間であることを忘れてはいけない。


そうでなければのめり込んでしまう。


ポツリポツリと降り出した雨の中、二人傘をさして歩くと、ほんの少しだけ距離が遠くて寂しく感じた。


契約している限り、お金を払っている限り、ジョングクは私の弟でいてくれる。私が望む時間をくれる。そう思うことが、もうすでにいけないことだったのに。



「ヌナ、笑って」


私は、この時間をどうしても守りたかったのだ。


「ヌナの笑った顔、大好きだから」

雨の日→←うるさい時計の針



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ちよ(プロフ) - ゆりかごさん» 更新や新作頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします……!ありがとうございます! (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - nyarさん» 幸せを感じていただけたら嬉しいです! グクとの海のデートはソロの日本語訳を参照にしながら執筆いたしました! 多幸感もテーマの一つです( ˘ω˘ ) (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 兎餅さん» 泣!?!? ありがとうございます! お返事遅れてしまって申し訳ないです! ありがとうございます! (2019年8月25日 17時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
ゆりかご - もうすごく感動しました( ´;゚;∀;゚;)これからも応援するので頑張ってくださいo(*≧∀≦)ノ (2019年7月29日 14時) (レス) id: 49ff43ec91 (このIDを非表示/違反報告)
nyar(プロフ) - はじめまして!かなりハマったしかなりときめきました!最後から3ページくらいからもう幸せすぎてヤバかったwこんな素敵なお話、ありがとうございます!あなたの他の作品も今から見に行きます^_^ (2019年5月22日 23時) (レス) id: 5ee86f0a2e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年4月28日 16時

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