言葉の力 ページ30
とてつもなく忙しい。
自分のわがままで掛け持ちにさせてもらったけれど、あっちもこっちもと目が回りそうだ。弟グループとバンタンとではメイクの仕方も変わる。時折間違えそうになって、慌てふためいてしまうのだ。
「スビン、目を瞑って」
クッションを手に持ってそういうと、まぶたを下ろしたスビンが微笑んだ。
「僕、ヌナのそれ好きです」
「それ?」
「目をつぶって、って。なんか、ドキドキする」
「口癖みたいになってたかも。意識してなかった」
「今から魔法をかけるよって、そんな風に感じます」
アイドルって、どの人も言葉選びが上手だと思う。人を喜ばせる言葉はもちろん、綺麗な表現というか、キラキラした言葉を素直に口にする。
彼らが話すだけで笑顔になるとはよく言うもので、最近は特にそう感じることが多かった。
「前にあったクマなくなってる。よく眠れてるの?」
「はい。ヌナがきてから、怖い夢を見なくなったんです。本当に魔法使いみたい」
「そんな魔法使えないよ。でもよかった。毎日いい夢を見てね」
「へへ、はい〜」
思っていたより現場がギスギスしているわけではなくて、彼ら自身が疲弊していることの方が気にかかった。
「このあと夕方の雑誌の時もヌナいらっしゃいますか?」
「ううん。これ終わったらBTSなの。ごめんね」
「そうなんですね、寂しいです」
目に見えてスビンがしょんぼりとするものだから、うっと言葉に詰まってしまった。いやだめだこのあとのスケジュールはもう決まっていたのだから。
ごめんね、と再度言い、彼らがスタジオに向かったところで急いでBTSの現場に走る。なんだか私もアイドルになった気分だ。
「おはようございます!」
「おはよー。おつかれ、すぐメイク入れる?」
「入れます」
「じゃあジョングギお願い」
半分はヘアメイクが終わっている状態で、指示された通りジョングクのところに歩み寄る。
あらかじめ全員のメイクのコンセプトは頭に入っているし、いつもとほとんど変わらないから大丈夫だ。
「Aヌナ」
「んー?」
「今日はもうずっとこっちですか?」
「うん、そうだよ」
「……嬉しい、です」
私がいなくて寂しいとか思ってくれたのかな、と思うと、勝手に嬉しくなって照れてしまった。
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めぐみ(プロフ) - はぁ………とため息が出るほど、ちょっと目の奥が熱くなるような感覚を知るほどに素敵な作品でした、ありがとうございます(;;)みんなすごく心が優しくて、読んでいて私も優しい気持ちになりました。もし番外編など、浮かびましたらその時をまた楽しみにしています! (2022年3月15日 19時) (レス) @page43 id: 70e57b3fd4 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 好きー (2021年8月18日 8時) (レス) id: d47eb74ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - ひろさん» ありがとうございます! ラストはしりすぎたかな? とちょっと心配だったのでホッとしました( ˘ω˘ ) 続編は今のところ考えてないです( ; ; )すみません( ; ; ) 何か浮かべば番外編を書くかもなあというくらいで……コメントありがとうございました! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - じゅりさん» ありがとうございます! 私自身続編系???となってましたがなんとかおさまりまして……笑 次の作品はかわいい控えめかもしれませんが、がんばります! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - ラストの展開、キュンキュンしながら読ませていただきました!面白かったです!続編楽しみに待ってますね! (2019年12月19日 18時) (レス) id: 099739feed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年12月8日 16時