私のヘアメイクさん【JK】

訪れそうな変化 ページ28

人生に変化はつきもので、私は変化というものが一番怖かった。人間関係もそうだし、環境もそうだし、自分の変化もそう。刺激なんてものより安定を求める、臆病な性格だったのだ。


「A、ちょっといい？」
「？ はい」


休憩中、ジョングクに髪を巻かれ終わった時にオンニに呼ばれた。雰囲気からして楽屋では話せなさそうな感じで、それを察して立ち上がる。

ジョングクは物足りなさそうだったけれど、「帰ってきたらヘアピンをごてごてに使いますね」のよくわからない宣言をされた。


「オンニ、どうしました？」
「うーん、とね。言いにくいんだけど……」


そこでコクリと息を飲む。

ジョングクと距離が近すぎることの注意か、自分の不手際があったのか、思い当たるようで思い当たらなくて、変にドキドキする。


「TXTにつかないか、って言ったら……困る、よね」


その発言は予想外だった。一瞬TXTてなんだ、と思ったくらいだ。

彼らにとって初めての弟グループ。今後大きく躍進していくであろう期待の新人アイドルだ。
彼らも彼らで忙しく、それもデビュー前からある程度わかっていたからスタッフも増えているはずだ。それなのになぜ。

オンニの言葉になにも返事ができなくて、ただただ次の言葉を待った。
何と言うのがベストなのかわからなかったから。


「あの子たちまだデビューしたばかりでしょう。ヘアメイクにも若い子が多いんだけど、……上手くいかない子とかちょこちょこいるらしくて」
「ああ……、媚び売られるのがしんどいとか？」
「まあそんなとこ。あわよくば女子というか」


そういうところも考えて雇っているはずなのになと思ってため息が出る。自分自身、この仕事に誇りがあるから余計に嫌になる。

好きになるのは仕方ないと思う。彼らはかっこいいし優しい。けれど、彼らを困らせてはいけないはずだ。

その線引きはしなくてはならない。好かれるのは大事だけれど、押し付けをしてはいけないのだ。


「完全に、ていうのはちょっと」
「そうだよね。……Aってね、どのメンバーもすごい空気読めるって言うの。だから入ってみたら変わるかもって思って。……掛け持ちなら？」



掛け持ち、か。


.

展開上TXTの名前は出ますがこの小説はあくまでBTSの小説なので、TXTのメンバーを知らなくても読めるようにしていきます。
TXTメンバーとの絡みはそんなにないと思われます。

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