進むか止めるか ページ39
ぱちり、ぱちりと瞬いて。ぽやっとした彼の唇には、私の唇についていた色が少し付いていた。
無機質な秒針の音が響く。時が止まったように感じたけれど、それはどうやら私だけらしい。
「ぼく、」
なぜか目を合わせたまま頷いてしまった。何も言われていないのに、彼の思考を肯定するように首を縦に振って。
「ヌナが、あまりにかわいくて、」
「あ、謝らないで!」
とっさに出てきた言葉はそれだった。ジョングクが衝動にも似た感覚でキスをしてきたのだったとしても、なんでもよかった。
ただ、謝られたくはなかったのだ。私へのキスが間違いだったと言われることほどきついことはない。
「……今日は、かわいくしてくれてありがとう」
「……Aヌナ、」
「明日も朝早いんじゃないの? 私も帰るから、ジョングクも早く帰らなきゃ」
そのあとタイミングよくチェヨンが現れて、私を送ってくれると言ってくれた。
ジョングクは何か言いたげだったけれど、何を言われるのか分からなくて、怖くて、逃げるようにチェヨンと事務所を出たのだった。
家に帰ってからも考えるのはジョングクのことばかりで、携帯の画面に映る自分の姿を見るたび嬉しいような切ないような気持ちが込み上げる。
私はこの気持ちをどうすれば良いのだろう。どうにかなってしまいそうな、この曖昧な関係を進めるべきか、ここで止めるべきか。
──すごくかわいいです
甘い笑顔が脳裏に蘇っては胸がぎゅううっと締め付けられて、好きで好きでどうしようもなくなってしまう。
自分の恋なのに、自分の思考でがんじがらめだ。
あの唇はあまりに甘くて熱くって、思い出すたび身を焦がす。
男の子に慣れていないから、どんな気持ちで彼がキスしたのかもわからないし、こらからどうなるのかも、明日どんな顔をすれば良いのかもわからない。
「……あ、明日休み、か」
モヤモヤとしたこの気持ちのまま休みを迎えるのも嫌だけれど、少しは気持ちも落ち着くかもしれない。
ジョングクの甘い笑顔が好きだ。優しくて、ほんの少し生意気で、拗ねっぽいところも。
私のことをたくさん気にかけてくれて、救ってくれたりして。
「……私、ジョングクのことめちゃくちゃ好きなんだなあ」
2351人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めぐみ(プロフ) - はぁ………とため息が出るほど、ちょっと目の奥が熱くなるような感覚を知るほどに素敵な作品でした、ありがとうございます(;;)みんなすごく心が優しくて、読んでいて私も優しい気持ちになりました。もし番外編など、浮かびましたらその時をまた楽しみにしています! (2022年3月15日 19時) (レス) @page43 id: 70e57b3fd4 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 好きー (2021年8月18日 8時) (レス) id: d47eb74ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - ひろさん» ありがとうございます! ラストはしりすぎたかな? とちょっと心配だったのでホッとしました( ˘ω˘ ) 続編は今のところ考えてないです( ; ; )すみません( ; ; ) 何か浮かべば番外編を書くかもなあというくらいで……コメントありがとうございました! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - じゅりさん» ありがとうございます! 私自身続編系???となってましたがなんとかおさまりまして……笑 次の作品はかわいい控えめかもしれませんが、がんばります! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - ラストの展開、キュンキュンしながら読ませていただきました!面白かったです!続編楽しみに待ってますね! (2019年12月19日 18時) (レス) id: 099739feed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちよ | 作成日時:2019年12月8日 16時