この恋は呪い ページ5
少し急な山道を登って、小高い丘の上についた。風の冷たさに震えると、テヒョンさんが後ろから抱きしめてくれた。「寒いねー」と言いながら。
まるでずっと前からの知り合いみたいに彼は接してくれる。それも仲良しさんみたいに。
「……今日、どうして高校に来たんですか?」
素直な疑問だった。次会う時は、とメッセージを送りさえされば、待つなんてことしなくて済んだのに、と。
「連れ出してやろうかな、って思ったから」
耳元で低い声が響いた。冴え渡る空気の中でテヒョンさんの声と星の瞬く音だけが耳に入る。
世界で私たちだけみたいだ、とはまた違う感覚。そんな前向きな感じじゃなくて。ああそうだ、そう、世界に私たちだけ置いていかれたような、そんな感覚。
きっと私が置いていかれていて、テヒョンさんがそんな私に合わせてくれているのだ。
「でもAちゃん受験生だしなあって思って、躊躇っちゃった」
だから軽い夜遊びに誘おうと思って、と付け加えた優しく笑う。
優しい人、なんだと思う。心が綺麗で深くて。
「サボりたかったです」
「うん」
「でも、先生から逃げたくない。先生がいなくてもなんてこと無いって、そう言いたい、言えるくらい強くなりたいです」
「うん」
ぎゅうっと抱きしめられて、そんな気なんてさらさらなかったのに先生のことを思い出して泣いてしまった。
先生のことが、好きだった。本当に本当に大好きだった。卒業したら結ばれるんだって、馬鹿みたいに信じてた。
「俺大学生だけど賢くないんだよね」
「大学生、」
「うん。だけど賢いヒョンならいるよ。あとね、優しい友達も、面白くて優しくてかっこいいヒョンたち。今度紹介するね」
どうして私にそんなに優しいの、と聞きそうになった。けれどもそれを、ぐうっと堪えてのみのんだ。
いつか聞く。問うのは今じゃ無いと思うから。
ただこの時は、与えられれ優しさに甘えていよう。ハリボテみたいな世界で、テヒョンさんの輝きだけが確かだから。
思い出の中でチラつく先生が早く消えればいいのに。
この恋は呪いのようだと、テヒョンさんの腕の中で先生の顔を浮かべて笑ってしまった。
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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時