あの「死んでもいい」の意味 ページ32
深い夜の海を映すような瞳が揺れる。
何と答えるのか、私たちはどうなるのか。マグカップの中のココアはもう湯気を立てていない。
「……俺、」
「はい」
「てっきり……もう、両思いだと思ってた……」
「え?」
ぶわわっと一気に顔を真っ赤にさせたテヒョンさんが、慌てて手で自身の顔を隠してしまう。状況が飲み込めずポカーンとしている私をチラリと見て、まじか、と彼はまた呟いた。
「……Aちゃん、月が綺麗ですねって、知ってる?」
「知ってるもなにも、普通に言うじゃないですか」
「ああ……知らない感じだったのか……やば、俺、すごい勘違いしてた」
あーとかうーとか唸っているテヒョンさんはまだ顔が赤くて、手を取って握ってみると余計それがわかった。
月が綺麗ですね、て、他に何の意味があるのだろう。そういえばその時、テヒョンさんが不思議な返事をしたことだけは覚えている。
内容までは覚えていないけれど。
「どう言う意味なんですか?」
「……日本ではね、愛してるって意味なんだよ」
「へ……?」
何がどうなってそうなるのか。日本の文化はわからない。テヒョンさんはしどろもどろで説明してくれたけれど、奥ゆかしすぎる告白で更に混乱した。
ロマンチックな人は使う手法らしい。よくわからないけれど。
「それに対する答えが、死んでもいいわ、なの」
「……あ、そういえば、そんな風なことを……」
「うん、」
私が気付いていなかっただけで、あの時からテヒョンさんの中で私は彼のものになっていた、のだろうか。
事実を知って、テヒョンさんの熱が伝染して私も顔が一気に熱くなった。
2人してわたわたとしてしまい、落ち着きたくなって何故かハグをする。
数学の公式が全部飛んでしまった。もういらないからいいけれど。
「……俺もAちゃんのこと大好きだよ。もうめちゃくちゃ好き」
ぎゅううっと強く抱きしめられて、爆発しそうなくらい体温が上がる。背に回ったテヒョンさんの手が私の服をきゅっと握るから、それを感じて私の心臓も握られたように苦しくなった。
「彼女になってくれる?」
「はい、」
「嬉しい……」
幸せって、こういうことを言うんだろうなと思い、テヒョンさんのことを抱きしめ直した。
「……あ、私、ずっと聞きたかったことがあって」
「なに?」
「どうしてあの日、私のことを助けてくれたんですか?」
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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時