小さなわがまま ページ21
家に帰って携帯を見ると、いくつか通知がきていて、テヒョンさんからだった。
わかった、と言う返事と家に帰ったら連絡してと、ついさっききている「まだ帰ってないの?」というもの。
慌てて「今家につきました」と送ると、すぐに既読がついて電話が来た。びっくりしてしまって手から携帯を落としてしまったが、一度深呼吸して携帯を手に取り直した。
「もしもし」
『もしもし? おかえり』
「ただいまです。すみません、返信できなくて」
『ううん、大丈夫。……うそ、ちょっと寂しかった』
微かに笑ってテヒョンさんがそう言うから嬉しくなる。私といない時も私のことを考えてくれたのかと思うと心が満たされていく。
テヒョンさんの思考の中に私がいる。彼の世界に私が住んでいる証拠だった。
『ジョングギと何して遊んだの? 教えて』
「映画見て、ハンバーガー食べて、……海に行って。それで帰ってきました」
『海、』
その単語にテヒョンさんが引っかかってくれて嬉しかった。うそみたいなあの夜のことを、テヒョンさんも特別なものとして覚えてくれているような気がして。
『……間があったけど、何かあった?』
「いえ。ただ、ジョングクが実は先生のこと知ってたみたいで。驚きましたけど、特に何もありませんでしたよ」
『……そう』
あまり積極的に人と話せないけれど、話を振られたら喋れる。テヒョンさんはお話が上手で明るいから、いつもはしんとなることはないのに。
なぜだろう、いきなり訪れた静寂に緊張する。
「テヒョンさん……?」
恐る恐る名前を呼ぶと、『うん』と返ってきてほんの少しだけ安心した。
『どんなことでも、1番に頼るのは俺にして』
すとんと落ちてきた言葉に、一気に体の力が抜けた。
「はい」
『……あ、勉強以外ね』
「ふふ、わかりました」
毎日テヒョンさんのことを考える。
けれど誰と何をして過ごしているのかとか切羽詰まったことではなくて、どんな時間を過ごしているのかという内容だ。
『じゃあまた連絡するね。おやすみ』
「あ、……ひとつだけ、わがままいいですか?」
『ん? なに? 何でもどうぞ』
ぼふりと掛け布団をかぶって、枕元に携帯を置く。今日の記憶の最後を、テヒョンさんの声で迎えたくて。
「寝落ち通話、したいです」
そのわがままに『もちろん』とテヒョンさんは言ってくれて、小さな願い事は叶った。
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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時