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そうだ、これが恋だった ページ29

一気に力が抜けて、糸が切れた操り人形のように、その場に座り込む。腰が抜けたのは初めてだった。

ばっくんばっくんと心臓はうるさく重く響き、頭がクラクラする。

いると思わなかった、会えると思わなかった。そもそもなんで会場を知って……グクが教えたのだろうか。

思考がぐちゃぐちゃになっているまま、テヒョンさんが私の視線に合わせるようにしゃがんで、いつものようにニッと歯を見せて笑った。


「久しぶり」
「お久しぶりです」
「元気そうでよかった」


今度はふわりと微笑んだテヒョンさんの顔を見て、泣いてしまった。
会いたかった気持ちだとか、会えた嬉しさだとか、どこかで張っていた緊張の糸がぷつりときれて、それが感情の蓋をしていたかのように溢れてしまったのだった。


「ご、ごめんなさ、」
「なんで謝んの。ここじゃ寒いから俺んち……まあ当たり前だけど何もしないからさ。来る?」


幼子をあやすように背を撫でられ、何度も首を縦に振ると、ふっと空気が抜けるように優しく笑われて、抱き抱えられてバイクに乗せられた。どこかで小さく黄色い歓声が聞こえる。


「まだ雪の降らない季節でよかったー」


11月の第3週、まだ雪は降らない。
ぎゅううっとテヒョンさんのことを強く抱きしめると「いい子」と呟いてくれた。

背に体を預けてみて、すんと小さく匂いを嗅いだ。テヒョンさんの香り。テヒョンさんのぬくもり。テヒョンさんの、大きな背中。


「……好きです、テヒョンさん」


走り出したバイクは声を届けない。
小さすぎる告白は、テヒョンさんの背と私の唇の間で消えてしまう。

一生この時間が続けばいいのに。それか、止まって仕舞えばいい。
この先に私以外の人がテヒョンさんの背に身を預ける日が来る可能性があるのなら、今この瞬間に神様に時を止めて欲しい。


このうつくしいひとを、わたしのものにしたいのに


神様はそうしてくれない。時間を平等に与えてしまう。

私の知らないテヒョンさんの時間がなかったらいいのに。欲はどんどん深くなるし自己中になるし、わがままになる。


自分勝手な嫉妬心と独占欲に、「ああ、そうだ、これが恋だった」と皮肉にも恋という感情を思い出すのだった。

そのキスは背徳か否か→←白馬ではないけれど



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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時

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