振り向いて、ユンギ先生

多くは望まない ページ7

「ぽろっと言ってしまったと」
「はい」
「スルーされそうだったけど先生もめちゃくちゃ動揺してたと」
「はい」
「終わり？」
「うん」

バレーのサーブを打ちながらそう話していると、「はっきりしろー！」と強烈なサーブをぶち込んだ。向こう側のコートで練習してた子の「きゃあ！」という声が聞こえてきた。


「ドードー」
「なんであんたはそんな落ち着いてんの！」
「え、だって、振られなかっただけよくない？」

ぽこんっと下手くそなサーブは弧を描いてネットの前に落ちた。あちゃあ、私がいるチーム、私のせいで負けるだろうな。

転がってきたボールを拾うと、ジヒョはボールを持ったままぽつりと呟いた。


「ずるいじゃん、そんなの」
「え？」
「ずるいよ、だって何にも言わなかったんでしょ、期待させてなんにもご褒美くれないんでしょ？」


切れ長の綺麗な目が私を見た。
私もボールを持ったまま固まってしまって、だんだん視線が下に向く。
ボールの縫い目を親指でなぞっていると、昨日の先生の綺麗な指を思い出した。


「ジヒョが言うご褒美はきっと大きいんだろうけどね、私は小さいのでいいんだ。それこそいい点とったときに頑張ったなって言ってくれるくらいで」


ジヒョはあまり納得がいっていない顔をしていたけれど、私がサーブを打ち始めると「そっか」とだけ言ってくれた。



多くは望まない。
多く望んだらその分だけ辛くなる。

期待もそう。私は「私なんか」って思うことで、欲をちょっとでも抑えようとしてるだけ。



あまりうまくはいってないけれど。

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